
No.053 再びドロップショルダーの作図 その4
実践!レディース・パターン教室 著:菊地 正哲
- 学習・知識
アパレル工業新聞 2025年11月1日発行 8面
この記事・写真等は、アパレル工業新聞社の許諾を得て掲載しています。
なんと、4回目に突入してしまいました。同じネタで回数を稼ごうとしているわけではありません。深掘りしていくと内容がどんどん膨張していくのは私の計画性のなさの所以でありますので、どうかご容赦を。今度こそ今回で終わりにします。たぶん。
さて、引き続きドロップショルダーの作図法の解説ではありますが、今までのような角度や比率などの数値による小難しい方法ではありません。もっと単純な、こんなドロップショルダーもありでは?と思うような作図法を紹介します。この方法なら悩みは一気に解決。ドロップ寸法も思いのまま。見た目の違和感と縫製の多少の手間を抜きにすれば、こんなに自由に設計できるドロップショルダーはありませんよ。さて、どんな作図法なのか、解説しましょう。
10.ピボットスリーブの逆転の発想によるドロップショルダー
従来のドロップショルダーの作図でもっとも悩むのが、カマ底と袖底のカーブと寸法が合わないことだろう。ならば、セットインスリーブのカマ底と袖底をそのまま使ってしまおうという、実に安直な考えによる作図である。つまり、山の部分は身ごろと一体化するが、袖底の一部分だけそのまま袖に残しておくのである。これはピボットスリーブの逆転の発想と言える。メリットは、どんなドロップでもセットインスリーブが引ければ悩まずにできること。デメリットは、これがドロップ?というデザイン上の問題と、縫製が大変そうだなあと思われることである。
【10-1】ドロップ寸法が最大の場合の作図例。
▼セットインスリーブの山の部分を切り離し、身ごろにくっつける。
【10-2】▼AH(アームホール)と袖山線が交差する点から分割線を引く。
▼分割線から袖底の部分を切り離し、もとの袖に戻す。
▼肩線をカーブで引き直す。
【10-3】パターンの完成図。
※このパターンの場合、袖付けの縫い代は6ミリ程度となる。
【10-4】[A]バスト92センチ、袖山の高さ=AHの34%のパターンを着せ付けた3D画像。
【10-5】[B]バスト92センチ、袖山の高さ=AHの25%のパターンを着せ付けた3D画像。
【10-6】[C]バスト102センチ、袖山の高さ=AHの30%のパターンを着せ付けた3D画像。
■応用編:ドロップショルダーのコート
この作図法でコートのパターンを引いてみた。従来だとドロップ寸法は袖の傾斜度とバスト寸法により限界値が決まるが、この方法だと袖山を高くすれば如何様にもなるのが特長である。
【10-7】ドロップショルダーのコートをアバターに着せ付けた3D画像。
11.マチ付きドルマンスリーブによるドロップショルダー
もう一つの方法として、ドルマンスリーブをドロップショルダーにしてしまうのはどうだろう。元々ドルマンスリーブとドロップショルダーは構造的に共通する部分があるので、これを利用するのも一つの手である。つまり、ドルマンスリーブの袖を好きなところで切り替えてしまえばよいのである。この方法を行うには、マチ付きのドルマンスリーブを利用するのが適している。これはもはや反則技のドロップショルダーと言える。
※マチ付きドルマンスリーブに関しては第22回(2020年7月号)を参照のこと。
【11-1】マチ付きドルマンスリーブに切り替えを入れてドロップショルダーにしたパターン。
――もうこれはどこまでも好きなだけドロップさせることが可能である。いっそのこと、ラグランスリーブを途中で切り替えてドロップにするという手もあるが、さすがにそれは退場レベルの反則か。
【11-2】パターンを着せ付けた3D画像。
――さて、今回のドロップショルダーの作図は如何だっただろうか?ドロップショルダーの定義から少々外れてしまうかもしれないが、こんなドロップもありだと思う人は、是非お試しを。

