国・地域の選択

判断を残し、共有し、考え続けられる「仕組み」をつくる

シリーズ「お客様の声」- 株式会社キャビネット様

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当社は、「服づくりへの愛と情報技術で、ファッション産業を支えていく。」をパーパスとし、情報技術でお客様の課題解決に役に立つソリューションをご提供することを目指しています。衣服設計の現場における課題をヒアリングし、どのような解決策が求められていて解決は何か、をお客様と一緒に考える活動を実施しています。

株式会社キャビネット 様は、アニメ・漫画・ゲームを中心としたライセンス商品の企画・製作・販売を行うほか、音声収録スタジオの運営・管理など、ものづくりとコンテンツを軸に事業を展開し、メインブランドを「SEVESKIG」としたアパレル事業も行われています。
今回、株式会社キャビネット アパレル事業部の山田様に、業務上での課題や改善方法についてお伺いしました。

【第1章】なぜ今、仕組み化なのか ── 技術は残さなければ消えていく

技術は人と一緒に消えていく

アパレルブランドが次々と生まれ、そして消えていく。アパレル業界では、それが決して珍しいことではありません。しかし、そのたびに現場で何が起きているのかを、私たちはあまり言語化してこなかったのかもしれません。

私自身もOEM、商社、生産管理、パターンと、複数の現場を経験してきた中で、ひとつ強く実感してきたことがあります。「どんなに優れた技術でも、残さなければ必ず消える」ということです。

生産地が変わるとき、前の工場で積み重ねられてきた修正履歴や判断理由が、次の現場に引き継がれることはほとんどありません。人が辞めれば、その人が持っていた「なぜ、そうしたか」という判断軸は、人と一緒に失われていきます。結果として、現場は何度も「ゼロ」からやり直すことになります。

属人化の先にある疲弊

多くの現場では、判断が特定の人に張り付いています。「ベテラン、部長、できる人」そうした人が悪いわけではありません。 むしろ「気づいて、やってくれている」人たちです。しかし、その状態が続くとどうなるか。

  • • 気づく人は、どんどん忙しくなる
  • • 他の人は、全体が見えない
  • • 若手は、何を聞けばいいかわからない

結果として、現場には疲弊と殺伐さが溜まっていきます。

システムだけでは意味がない

過去には、自らシステムを組み上げて、制服のサイズ判定システムにも取り組みました。 多くの人とお金をかけて作り上げたシステムは、一時的には確かに成果を出しました。しかし、システムをメンテナンスできる人がおらず、引き継ぎができませんでした。

誰でも使い続けられる形に落としきれなかった結果、人が変わるとそのシステムも使われなくなっていったのです。成果があっても、持続できなければ残らない。ということを痛切に感じた経験でした。

問題は人ではなく構造

ここで大事なのは、これは誰かの能力や意識の問題ではないということです。
問題は「判断を残せない構造」そのものにあります。その構造を壊さない限り同じことが繰り返されてしまう。だからこそ必要なのが「仕組み化」でした。

【第2章】現場はこうして変わった ── 判断を残し、時間を取り戻す

「仕組み化」と聞くと、多くの人が「大掛かりなDXが必要なのでは?」「新しいシステムを入れないと無理なのでは?」と思うかもしれません。
しかし、実際に現場を変えたのは、もっと地味で小さな取り組みでした。

仕組み1:「起きたことを書く」から始まる「業務改善シート」

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最初に作ったのは、業務改善シートです。

  • • 何が起きたか
  • • 誰が、なぜ問題だと感じたか
  • • 放置すると何が起きるのか
  • • どう改善するのか

をシンプルに書きます。

「CADが1台しかなく切り替えでロスが出ている」「プロッターの設定が面倒」「LANケーブルが足りない 」
どれも、誰かが「まあいいか」でやり過ごしてきたことです。

ポイントは「あったら便利」ではなく、「ないから困っている」という理由を書くことでした。その理由があれば、判断は早くなります。 設備投資も改善も個人の感覚ではなくなります。また、社内稟議が必要なものは、リーダーが稟議書を作るのではなく、若手社員にも積極的に作らせ、解決まで自分でやり遂げるようにしています。

これにより「誰かがやってくれていた仕事」が可視化されていきました。

仕組み2:修正を増やさない工夫「判断ログ」

アパレルの設計工程で修正往復の多さは、個々の技術力の問題というより、設計初期段階での合意形成が足りていないこと、判断に至った理由や背景が「共有資産」として残っていないことに起因していると感じています。

設計初期段階でデザイン意図や優先順位を明確にし、どの観点で確認し、何をもって判断するのか、を残しておくことで、後工程で生じる認識のズレや不具合を減らすことができます。また、修正内容やその理由も履歴として蓄積していくことで、似たデザインや来シーズンの計画に生きてきます。

修正を完全になくすことは難しくても、確認を前倒しし、判断理由を「残る情報」として積み重ねていくことで、修正往復の質の向上回数の削減につながります。

仕組み3:時間は気合いでは短縮できない「プロット履歴一覧」

何をどれだけプロットして、パーツをまとめる作業(あの「パリパリ」作業)に何分かかるのかを記録しました。当社はパーツ数が100を超えるデザインや、コレクション前には相当な量を出力します。これは「頑張ればもっと早くなる」ものではありません。

記録することで以下のようになりました。

  • • 無理な依頼は無理だと言える
  • • 社内で出力するか、外注するかの判断ができる
  • • 何に時間を使っているのかが、自分でも分かる
  • • プロット用紙やペンの補充タイミングが分かる

仕組み4:情報は囲わずに開く「Notion®・発注管理」

Notion® (仕事で使う情報などを1つにまとめられるツール)やスプレッドシートを使った情報共有も同じ発想です。

Notion® を活用し、社内ルール・機材の使用マニュアルなどを共有しています。誰でも書き込め、誰でも見られるようにしています。細かく書き過ぎないのがポイントです。
スプレッドシートを活用し、予算・発注・進捗状況を共有しています。MD、営業、生産、社長まで全員が把握できるようにしています。

大事なのは誰でも見られる状態にすることだと思います。そうすることで「これは誰の仕事?」ではなく「自分は何を判断すべき?」に変わっていきます。

※ Notion は、Notion Labs, Inc. の米国およびその他の国における登録商標または商標です。

クリエイティブに時間を戻すために

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目的は、効率化そのものではありません。本当にやりたい仕事に時間を戻すことです。
考える、試す、悩む。そのために、雑務や無意識のロスを仕組みで減らすのです。

【第3章】考え続けられる設計の未来 ── CAD・AI、そして技術継承へ

残したいのは「判断の理由」

技術継承というと「やり方を教える」「数字を残す」そんなイメージが強いかもしれません。
しかし、本当に残したいのはそこではありません。

「なぜその素材で、その寸法なのか」「なぜ5mm動かしたのか」そこには必ず結果になる前の迷いや感覚があります。
しかし、多くの場合、記録に残るのは結果の数字だけです。それでは技術は継承されません。

CADが「考える相手」になる未来

私が理想像として描いているのは、こんなCADです。

  • • CADの中に判断を書き残せる
  • • 設計の工程を理解し、補助してくれる
  • • 過去事例から考え方を提示してくれる
  • • 会話レベルで思考を引き出してくれる

AIは答えを出す存在ではありません。考えるための相手です。
「どう思う?」「この場合、何が論点?」そう問い返してくれる存在がいることで、人は考え続けることができます。

小さな自動化が現場を救う

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大きなDXでなくてよいと思います。
「FAXをやめメールにする」「手入力をなくし自動反映にする」「確認漏れを減らすアラートをつける」
こうした小さな改善が、現場から疲弊を取り除いていきます。

東レACSの受け止め

今回のインタビューを通して、改めて強く感じたのは、お客様の現場で起きている問題の本質が、技術や人ではなく「残し方」であるということでした。

どの現場にも優れた判断や工夫は確かに存在しています。しかし、それが記録されず、共有されず、引き継がれないことで、現場の疲弊や属人化を生み、同じやり直しを何度も発生させているのだと、非常にリアルに伝わってきました。

また、特に印象的だったのは、大きな投資やシステムではなく「些細なことでも書く」「時間を測る」といった、一見すると小さな取り組みが、現場を大きく変えていた点です。仕組み化は、何かを導入することではなく、見えていなかったものを、見える形に変える行為そのものなのだと、私たち自身も改めて認識しました。

そして第3章で語られている「判断の理由を残す」という考え方は、今後の技術継承において非常に重要な視点だと感じています。 また、多くのお客様に共通する課題だとも感じました。当社は、お客様の課題に向き合いながら「残せる仕組み」を一緒に作っていきたいと考えています。

会社名 株式会社キャビネット
ウェブサイト 神保町のレンタルスタジオ・ライセンス製品・雑貨販売の株式会社キャビネット

※掲載内容は2026年5月時点の情報です。

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