実践!レディース・パターン教室26(パンツの構造理論とパターンメーキング その4)

パターンメイキングをアパレルCADで実践

  • 新聞掲載

アパレル工業新聞 2021年3月1日発行 7面
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今まで3回にわたってパンツの構造理論を解説してきましたが、今回からいよいよパターンメーキングの説明に移ります。この理論自体が今までのパンツの作図法とは全く異なるアプローチによるものですから、パターンメーキングも画期的な方法で行うことになります。用意するのは既述のとおりスカート原型と股ぐりゲージです。

人体の股ぐりの断面図からパンツのパターンを作図するアイデアと方法は、従来から数多く存在しています。その代表的と言っていいものが、1996年に出版された中澤愈(すすむ)氏による『衣服解剖学』という著書の中で紹介された、人体の側断面図とパンツのパターンを重ね合わせた図です。この図を見た当時、私は改めてパンツは股ぐりから作られるものだと実感しました。

しかし、この図もそうですが、これに近い他の作図法も含めて、人体の股ぐりからパンツの股ぐり形状を得る途中の工程が具体的に示されておらず、最終的には囲み製図で作られたパンツのパターンを人体の側断面図と重ね合わせることで、人体とパターンの相関関係を視覚化しただけではないか、と思うようになってきたのです。

私の考え方は至って単純です。そこに股ぐりがあるのだから、それを定規にしてパンツの股ぐりを引けばいいではないか。そうだ、ついでにスカート原型も使ってしまおう。ややこしい囲み製図とはおさらばだ。これが今回の構造理論に結びついた経緯です。 という訳で、実際のパターンメーキングの説明をしましょう。

8.股ぐりゲージの作り方

とかくパンツは股ぐりのカーブが最も重要と思いがちだが、シルエットに最も関係するのがヒップ寸法と渡り幅のバランスである。この渡り幅を決定するのに重要な役割を果たすのが股ぐりゲージである。ここではボディーの股ぐりではなく、モデルの股ぐりを抜き取る方法と、簡易的なスカート原型の作図法を説明する。

【8-1】まずウエスト寸法とヒップ寸法を測る。ウエスト寸法は測る位置にゴム紐を水平に巻く。※水平であることが重要。ヒップ寸法はヒップトップの位置を、ゆとりを入れずに測る。ウエストからヒップトップまでのヒップ丈を測る。

――モデルを測る場合の着衣はレオタードなどの体に密着したものが理想だが、スキニージーンズなどのフィットしたパンツを履いた上からでもよい。

【8-2】外パスなどを使って、ウエスト位置の厚みを測る。※外パスについては2020年9月号を参照。

【8-3】紙の上にWL(ウエストライン)とHL(ヒップライン)を水平に引き、ウエストの厚みを測った外パスをWLに乗せて印を付ける。

【8-4】モデルの股ぐりに自在曲線定規を隙間のないように添わせ、前後ウエスト位置の目盛りを読んで控える。※自在曲線定規については2020年9月号を参照。

――自在曲線定規を沿わせるとき、股に食い込まないように強く引き上げ過ぎないようにする。また、ジーンズなどの上から沿わせる場合は、ファスナー明き部分の厚みを考慮して上から押えるように沿わせる。

【8-5】沿わせた形状が崩れないように自在曲線定規の両端を持ち、紙の上に置く。WL上の印に前後の目盛りを合わせて、内側をなぞる。

――股ぐりの前後を間違えないように注意する。

【8-6】なぞった股ぐりのカーブをなだらかに修正しする。HLの前から3分の1のところに垂直線を引き、股ぐりとの交点をCP(クロッチポイント)とする。

――CPの位置は脇線の位置やデザインによって変化するが、ここでは標準的な位置として前から3分の1とする。

【8-7】簡易的なスカート原型の作図。ヒップ寸法のゆとりは入れていないので、必要に応じて加える。あとはダーツ配分も含めて全体のバランスは適宜調節する。

――パンツ用なのにスカート原型と呼ぶのは変な感じだが、ここはスルーして頂きたい。モデルの正確なスカート原型を作るには詳細な採寸と仮縫いが必要だが、この作図はウエスト寸法とヒップ寸法だけで作る簡易版なので、最終的な補正が必要になる場合があることをお断りしておく。

9.最も簡単なパンツの作図

今回の3つのブロックによる構造理論を、そのままパターンメーキングの手法として取り入れた作図法である。小難しい数値による理論は一切なく、対話をするように作図ができるのが特徴である。オーダーメイドなどの個人対応に適した作図法とも言えるが、設計の過程を視覚的に確認できるので、修正する際の原因と対策が分かり易い。既製服のパターンメーキングにも簡単に応用ができる。

【9-1】▼新しい紙に股ぐりゲージをなぞる。
▼前後スカート原型を股ぐりゲージのヒップラインに水平に合わせてなぞる。
▼CPから3㌢下がったところに渡り線を水平に引く。
▼脇線を渡り線まで垂直に延長する。

【9-2】▼9-1の股上部分を上がりでカットする。
▼前後の渡り幅に合わせて、渡り線をたたむ。

【9-3】▼パンツ丈の大きさの新しい紙に渡り線を水平に引く。
▼渡り幅を決め、股下部分を任意の形状で引く。※渡り幅の前後差は4センチ。
▼9-2の渡り線の上に股上部分を乗せる。

【9-4】▼渡り線上の三角の隙間を減らすため、後ろの股ぐりを任意にたたむ。※たたんだ分は伸ばしになる。
▼脇を基点に股下線を重ねる。※重ねた分は伸ばしになる。

【9-5】外周をトレースした完成パターン。

――以上、今回紹介した作図法はBブロックの形状を紙の切り貼りによって得る方法だが、工夫次第で切り貼りは省略できるだろう。勿論、CADを使えば紙は全く不要である。 次回は、切り貼りのない平面製図による作図法を紹介する。多少の数値による操作が必要になるが、理屈は全く同じである。