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No.037 袖のパターンメーキング(その5)袖とアームホールの関係

実践!レディース・パターン教室 著:菊地 正哲

  • 学習・知識

アパレル工業新聞 2023年1月1日発行 5面
この記事・写真等は、アパレル工業新聞社の許諾を得て掲載しています。

今回は袖のパターンメーキングあるあるです。
身ごろのアームホールを利用して袖の作図をするとき、山底のカーブをカマに沿わせるように引きますが、このときの前後のアームホールがどんな状態で据えられているかが問題です。
例えば4面ジャケットの場合、皆さんは前後脇身ごろのバストラインを水平にして据えますか?あるいは脇線を突き合せて据えますか?3面ジャケットの場合であれば何も悩む余地などなく、当然バストラインは水平の状態で据えますよね。何故なら、それが出来上がったときに正しいアームホールの形状になるからです。
それがパネルラインやプリンセスラインの4面ジャケットでも同様であり、如何なる場合もバストラインは水平に据えるのが当然のように思っているのではないでしょうか。何故なら、脇線を突き合せて据えるとアームホールは上広がりになり、カマ幅が増えて正しいアームホールの形状にはならないと思われているからです。
しかし、ここに大変な落とし穴があるのです。正しいと思うこと、当然と思うことを、本当にそうなのか確かめてみませんか?実は気づいていないことや思い違いをしていたことがあるかも知れませんよ。

【1.袖の設計、どっちが正解?】

プリンセスラインのジャケットを例にして、袖の設計をする際の基本事項について考えてみよう。
一般的なジャケットの袖の作図は、アームホールを下敷きにしてその上に袖山線を引くのだが、それには当然正しいアームホールの形状が前提となる。正しいアームホールの形状とは、脇と肩を縫い合わせて服として出来上がったときの形状である。
さて、正しい袖の設計はバストラインを水平に据えて行うべきか、あるいは脇線を突き合せて行うべきか、どちらであろうか?

実践!レディース・パターン教室37[1]

【2.正しいアームホールの形状はどっち?】

まずはアームホールの設計の段階から考えてみよう。アームホールのカーブを引く際、4面の場合はカマ底のつながりをどう扱うかがポイントになる。
Aはバストラインを水平にした状態で出来上がりのアームホールの形状にする。これだと脇を突き合わせたときにカマ幅が広がり、カマ底のつながりが悪くなってしまうが、くせ取りでバストラインを水平にすることで元のアームホール形状に戻るので、これでよい。
Bは脇を突き合わせた状態でカマ底がつながるような形状にする。しかし、バストラインを水平に置くとカマ底のつながりがV字になってしまうが、果たしてこれでよいのか?

実践!レディース・パターン教室37[2-1]

実践!レディース・パターン教室37[2-2]

【3.くせ取りの実際 】

Aはくせ取りで元のアームホール形状に戻ることが前提であるので、実際に試してみよう。これは縫製現場でアームホールにテープを貼る際に必ず行われている作業である。
まず、バストライン水平のアームホールゲージを作り、その上に脇を縫い合わせた身ごろを置く。
ヨコ糸が水平になるように布を斜めに引き上げながらアイロンをかけ、アームホールがゲージに合うようにくせを取る。
布がこの形状を保たなければならないのだが、時間を置いて再びゲージの上に置くと、殆どくせ取り前の形状に戻っている。アームホールにテープを貼ったところで同じで、よほど可塑性のある布でない限りこれが現実的な結果である。

実践!レディース・パターン教室37[3]

【4-1.そもそも脇にダーツはあるのか?】(ボディ原型の場合)

最小限のダーツで構成されたボディ原型を例に見てみよう。前身ごろはバストラインが水平で、後ろ身ごろはバストラインが水平ではなく脇下がりのカーブを描くものとする。
バストラインが水平になるように後ろ身ごろを展開して、前身ごろと脇を突き合せる。このとき、脇線にはダーツはなく(あるいは極小)、グレーの部分がフラットになる。つまり、この部分はくせ取りの対象外エリアとなる。

実践!レディース・パターン教室37[4-1]

【4-2.そもそも脇にダーツはあるのか?】(プリンセスラインのジャケットの場合)

ジャケットのストレート原型にウエストを絞るダーツを入れたものを例に見てみよう。3面にも4面にも対応できるよう、ダーツは5カ所に振り分けたものとする。
最も大きいダーツは後ろカマ幅線の位置にあるダーツで、脇のダーツは最も小さい(あるいはゼロ)。これもグレーの部分がフラットになり、くせ取りの対象外エリアとなる。
これをプリンセスラインで分割して4面にすると、脇身ごろの中央にはダーツが残る。このダーツをたたむと、脇身ごろのバストラインは直線ではなく「へ」の字(正確にはカーブ)になる。これを便宜上直線と捉え、バストラインが水平になるように脇身ごろを置き直すと脇にダーツが発生する。しかし、これは製図上のダーツであって、実際にはダーツは存在していない。このときのアームホールはカマ底がV字になる。

実践!レディース・パターン教室37[4-2]

【5.身ごろへの影響は?アームホールの断面は?】

AとBそれぞれの方法で2枚袖を作図し、3Dシミュレーションで着装状態を比較してみよう。
Aの外観は前アームホールにだきじわが確認できる。断面を見てもアームホール全体が変形している。
Bは外観、断面ともに破綻がなく正常な状態であると言える。

実践!レディース・パターン教室37[5-1]  実践!レディース・パターン教室37[5-2]

結論としてどちらが正解かは製法にもよるが、布地の特性への対処やアイロンによるくせ取りなど、縫製時における付加的な扱いはここでは考えないことにして、パターンの形状がそのままシルエットに出るという前提で設計をすることを基本に考えれば、正解はBということになるであろう。

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