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No.029 パンツの構造理論とパターンメーキング その7

実践!レディース・パターン教室 著:菊地 正哲

  • 学習・知識

アパレル工業新聞 2021年9月1日発行 4面
この記事・写真等は、アパレル工業新聞社の許諾を得て掲載しています。

実践的な平面製図によるパンツの作図の第3弾、今回はタックパンツです。タックとは、シルエットにボリュームを与えるための手法ですので、大事なのはボリューム感であり、それをパンツというアイテムの中で如何にその時代のトレンドに合った感覚で表現するかということが、タックパンツの設計における肝であります。平たく言えば、かっこいいパンツを作るにはどうすればよいかということですが、そのようなコツというか、こうすればかっこいいパンツになりますよ、とか、今売れているパンツはこういうパターンですよ、といったお手軽で即効性のあるあんちょこ的なネタがあったら、私も知りたいですね。まーそんなネタを探すより、市場調査をして売れている他社のパンツや、トレンド最先端のハイブランドのパンツを買って来て、パターンを抜き取ってしまう方が早いですが。
と、何故か皮肉を言いたくなって、つい書いてしまいました。話をタックパンツに戻すと、前述したように誰でも一度は悩んだことがあるであろうタックの折り山とクリーズのつなげ方に焦点を当てて、作図上のポイントを解説します。そして繰り返しになりますが、他社のパターンを研究することは無論大切ですが、この構造理論を基にした技術で、時代に合ったシルエットのパンツを、他社のパクリではなく自分たちの手で作っていただきたいです。

10C.平面製図によるパンツの作図(タックパンツ)

タックパンツの作図法は大きく分けて2つある。1つは、ノータックのパンツのパターンを展開してタックパンツにする方法。もう1つは、最初からタックを含めた値を用いて製図をする方法である。更にこの製図法には、囲み製図だけではなく、今回の構造理論による作図法も含まれる。クリーズの無いパンツであれば、パターン展開で作図をしても何も問題ないが、クリーズとタックをつなげるとなると、途端に悩むことになるケースが多い。これは、パターン展開は回転による操作であるため、回転することによりクリーズの角度も同様に変化し、タックとつなげるための狙いの位置がなかなか想定通りにいかないためである。したがって、タックパンツの作図には、囲み製図か、今回の構造理論による作図法が適していると言える。まずは、それを略図化したもので説明する。

【10C-1】タック展開①(既存のダーツをそのままクリーズとつなげる)
[A]は裾を基点に展開した図。クリーズの角度が変わり地の目が通らなくなる。また、タックとクリーズが直線につながっていないため、タックが立ち易くクリーズが捻じれたように見えてしまう。
[B]は平行に展開した図。タックが立ち易いのは同じだが、クリーズに地の目が通るので、タックの位置を狙い通りに決め易い。


【10C-2】タック展開②(ダーツとクリーズを一直線につなげる)
[A]は裾を基点に展開した図。タックの立ちやクリーズの捻じれはないが、クリーズに地の目は通らない。また、タックをたたんだ時に上端が揃わなくなるので、WL(ウエストライン)の調整が必要。
[B]は平行に展開した図。WLの調整が必要なのは同じだが、これもクリーズに地の目が通るので、タックの位置を狙い通りに決め易い。内向きタックに適しているが、外向きタックの場合は視覚上タックの角度が上広がりに見えるので、前中心線に傾斜をつけてタックがハの字に見えるようにするなどの操作が必要になる。

【10C-3】前スカート原型のダーツ位置を、タックにしたい位置まで移動する。

【10C-4】ダーツの長さをそれぞれHL(ヒップライン)まで延長する。

【10C-5】ダーツを求めるタック分量になるよう水平に展開する。このときのHL上での隙間をそれぞれa、bとする。※タック展開①の[B]の扱いになる。

【10C-6】股ぐりゲージをタックパンツ用に調整する。ヒップの厚みをaとbの合計の2分の1を目安に広くする。HLから下は任意に深くする。

【10C-7】▼股ぐりゲージを用紙の上に垂直に置いて写す。
▼HL(ヒップライン)の両端点H、H'に、前後のスカート原型のHLを合わせて写す。このとき、前中心線は垂直に置き、後ろ中心線はウエスト位置で2センチ倒して置く。

【10C-8】▼中心側タックの山折り線とHLとの交点をTとする。
▼T~S1=T~G1。
▼G1から垂直線を引き、股ぐりとの交点をCP(クロッチポイント)とする。
▼Tから垂直線CL(クリーズ)を引く。

【10C-9】▼股ぐりゲージを乗せ、点Hを基点にCPの高さが0.5センチ下がるところまで回転する。
▼HからCPまで股ぐり線をなぞる。
▼この角度のまま股ぐりゲージの縦基準線を下方に延長し、前の股下線とする。
▼新しいCPから水平線CRL(渡り線)を引く。

【10C-10】▼前後スカートの脇線をHLから直角に引く。
▼S1~S2=S1'~S2'。
▼S2'から水平線CRLを引く。
▼股ぐりゲージを乗せ、点H'を基点にCPがCRLより0.5~1センチ下がるように回転する。※このとき、回転の中心は股ぐりのカーブのつながりを考慮して、点H'から下がった点を基点としてもよい。
▼H'(もしくは回転の基点)からCPまで股ぐり線をなぞる。
▼この角度のまま股ぐりゲージの縦基準線を下方に延長し、後ろの股下線とする。

【10C-11】▼脚部の幅、長さ、形状を決め、前はCLに合わせ、後ろはCRLの中央を中心に脚部を製図する。

【10C-12】▼前脇線は上端からKL(ニーライン)の間を自然なカーブでつなげる。このときHLで0.5センチ内側を通る線にする。
▼後ろ脇線はHLからKLの間を自然なカーブでつなげる。
▼股下線はCPからKLの間を自然なカーブでつなげる。後ろの股下線が短くなった分は伸ばしにする。

【10C-13】完成したタックパンツのパターン。

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