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No.028 パンツの構造理論とパターンメーキング その6

実践!レディース・パターン教室 著:菊地 正哲

  • 学習・知識

アパレル工業新聞 2021年7月1日発行 4面
この記事・写真等は、アパレル工業新聞社の許諾を得て掲載しています。

今回は応用編としてスリムパンツの作図を紹介します。スリムパンツと言えば、スキニージーンズに代表されるような下半身全体に密着したシルエットのパンツがありますが、今回は2000年台に大流行した美脚系パンツのような、スタイルを美しく見せることを目的とした、特にヒップ下の余りをなくしたシルエットの作り方を解説します。更に、タックパンツの作図では、誰でも一度は悩んだことがあるであろうタックの折り山とクリーズ(センタープレス)のつなげ方に焦点を当てて、作図上のポイントを解説します。
この原稿を書いている令和3年現在、パンツのシルエットはウエストにゴムが入ったゆったりしたシルエットのワイドパンツが台頭しています。美脚系という言葉がもはや死語となっていますが、クリーズの入ったスリムパンツでさえウエストにゴムが入っているご時勢です。この先、どんなシルエットが台頭してくるか分かりませんが、流行は繰り返し、スキニーのように流行に左右されないジャンルとして定着していきますので、どんなシルエットにも対応できるように、この構造理論を基にした作図で時代に合ったシルエットのパンツを作っていただきたいと思います。

10B.平面製図によるパンツの作図(スリムパンツ)

作図方法は基本的に前回の基本形パンツと同じだが、基本形パンツとの大きな違いは、設計段階から体型を考えて作図をすることである。どのような体型に合わせればシルエットが美しく、また機能性のあるパンツになるのか、まずは体型について考察する。

【10B-1】3人の体型の異なる女性を側面から撮影した写真。
○中央の女性は、ウエストが水平で背中とヒップトップがほぼ同じ高さである。
○左端の女性は、ウエストが前下がりで背中よりヒップトップが高くなっている。
○右端の女性は、ウエストが後ろ下がりでヒップトップより背中のほうが高くなっている。
仮に中央の女性を標準体とするなら、左端の女性は反身体、右端の女性は屈伸体であると言える。

【10B-2】反身体、標準体、屈伸体をイラストで表した図。それぞれの股ぐりの断面形状に注目する。
○反身体は股ぐりが前傾しているためウエストが前下がりになり、後ろウエストから床までの距離が長くなる。
○屈伸体は股ぐりが後傾しているためウエストが後ろ下がりになり、後ろウエストから床までの距離が短くなる。
スリムパンツは基本形パンツより多くの運動量が必要なので、シルエットが美しく、機能性のあるパンツにするためには、反身体を基準に設計することがポイントである。

【10B-3】▼股ぐりゲージを前傾にして用紙の上に置いて写す。前傾度は股ぐりゲージの縦の基準線の下端で2㌢とする。
▼縦の基準線の上端から垂直に線を引き、股ぐりとの交点CP(クロッチポイント)を求める。

【10B-4】▼HL(ヒップライン)の両端点H、H'に、前後のスカート原型のHLを合わせて写す。このとき、前中心線は垂直に置き、後ろ中心線はウエスト位置で2㌢倒して置く。

【10B-5】▼股ぐりゲージを乗せ、点Hを基点にCP(クロッチポイント)の高さが1㌢下がるところまで回転する。
▼HからCPまで股ぐり線をなぞる。
▼この角度のまま股ぐりゲージの縦基準線を下方に延長し、前の股下線とする。
▼新しいCPからCRL(渡り線)を水平に引く。

【10B-6】▼前スカートの脇線をHLに直角にCRLまで延長し、HLと脇線の交点をS1、CRLと脇線の交点をS2とする。
▼S1~S2の距離を測る。
▼後ろスカートの脇線も同様に延長し、HLと脇線の交点をS1'とする。
▼S1'からS1~S2と同距離を脇線上にとり、S2'とする。
▼S2'からCRLを水平に引く。

【10B-7】▼股ぐりゲージを乗せ、点H'を基点にCPがCRLより0.5~1㌢下がるように回転する。※このとき、回転の中心は股ぐりのカーブのつながりを考慮して、点H'から下がった点を基点としてもよい。
▼H'(もしくは回転の基点)からCPまで股ぐり線をなぞる。
▼この角度のまま股ぐりゲージの縦基準線を下方に延長し、後ろの股下線とする。

【10B-8】▼後ろの股下線を2㌢水平に移動し、後ろ渡り幅を狭くする。
▼後ろの股ぐり線を最深部で1㌢深くなるように引き直す。※股ぐりの長さが短くなった分は伸ばしにする。

――渡り幅を狭くして股ぐりのカーブを深くする操作は、「7.ヒップ下の余りを減らす方法」の③と同様の扱いを平面で操作したものである。

【10B-9】▼前後のCRLのそれぞれ中央をパンツの中心とし、そこから下に垂直線CL(クリーズライン)を引く。
▼脚部の幅、長さ、形状を決め、CLを中心に脚部を製図する。

【10B-10】▼ダーツ量の一部をHLに展開し、1本ダーツに集約する。
▼WLは前中心で2㌢下げる。
▼脇線はHLからKL(ニーライン)の間を自然なカーブでつなげる。
▼股下線はCPからKLの間を自然なカーブでつなげる。※後ろの股下線が短くなった分は伸ばしにする。
▼CLをウエストまで延長して地の目線とする。

【10B-11】完成したスリムパンツのパターン。
次回は、タックパンツの製図の説明をする。

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