実践!レディース・パターン教室18(ラグランスリーブの作図 その2)

パターンメイキングをアパレルCADで実践

  • 新聞掲載

アパレル工業新聞 2019年11月1日発行 5面
この記事・写真等は、アパレル工業新聞社の許諾を得て掲載しています。

前回説明した、パターン展開によってセットインスリーブからラグランスリーブに展開する方法は、精度が高いパターンを引くことができる反面、袖のパターンを用意しなければならない上に複雑な展開作業が必要なことから、実際の仕事では正直あまりやりたくありません。もっと簡単にサクッと引けて、なおかつ精度が高い作図法はないものか。そう考えるとやはり平面製図しかないなと思うのですが、巷にある様々な平面製図の作図法のどれを見ても、精度の面で不満を抱かずにはいられませんでした。

今回紹介する作図法は、平面製図でありながら精度の高さを追求して考案した、従来とは全く違う作図法です。少々ややこしい作図法ではありますが、数値による小難しい理論は一切ないので慣れてしまえば短時間で引けるようになります。ポイントはずばり"カマ底の反転軸"です。

5.従来のラグランスリーブの作図例

一口にラグランスリーブと言っても、ジャケットやコートなどに用いられる構築的なものや、ポロシャツやトレーナーなどに用いられるカジュアルなものまで、様々なデザインがある。それらのデザインにより、作図法も様々な方法が存在している。それらの作図法を大きく分類すると、セットインスリーブをラグランスリーブに変更する"袖ありき"の方法と、身頃から直接ラグランスリーブを作図する方法とに分かれる。それぞれの作図法の例を挙げてみよう。

【図9】セットインスリーブをラグランスリーブに変更する作図法の例。身頃にラグラン線を引いて分割し、セットインスリーブの袖山に合体する方法は、「4.パターン展開によるラグランスリーブの作図」と同じだが、合体時の複雑な展開作業を省いて簡略化している。肩先と袖山の間にできる隙間はイセ込みで処理できるレベルではないので、余分は余りが出るのは明白である。しかし、セットインスリーブの袖底部分はそのまま利用するので、袖のすわりや振りなどはそのまま保たれる。これが袖ありきの方法のメリットではある。

【図10】身頃から直接ラグランスリーブを作図する方法の例。この作図例もそうだが、袖の傾斜と袖山の高さが数値で決められているものが多い。そのため、デザインの応用が利かない。袖の傾斜と袖山の高さの関係は経験則によって求めるしかないが、トワルによる修正を前提とするなら、一次的なパターンとして扱う分には有効と言える。

――出展は明かせないが、この2つの作図例は実際のテキストからの抜粋である。他にもっと緻密な作図例はあるが、基本的な考え方はどれも前述の2つの大分類に属する。共通して言えることは、平面製図の場合は袖の傾斜と袖山の高さの関係が重要だということである。袖底部分の設計はその関係性によって求められ、その結果として袖のすわりと振りが決定する。次に紹介する作図法は、それらの関係性に重点を置いて考案した、画期的な平面製図の方法である。

6.平面製図によるラグランスリーブの作図

身頃から直接ラグランスリーブを作図する方法である。袖のパターンを使用しないので、実践ではスピーディーにパターンを引くことが出来る。カマ底を反転する際の反転軸の決め方に新しい理論を取り入れているのが特徴である。やや特殊な操作になるので、多少の慣れが必要になる。どちらかと言えばハンドによるパターンメーキングより、CADを使用する方がより簡単に引くことが可能である。

【図11】▼身頃のパターン。
▼肩線をゆとり分として5㍉上げて肩先を延長する。その際、後ろ肩線は前より5ミリ長く延長する。※この5ミリは後ろ肩のイセにする。

【図12】▼前身頃の肩先から袖丈線RSを任意の傾斜で引く。※ラグランスリーブの性質上、傾斜度は床面から30度以上が好ましい。
▼脇下点からRSに対しての直角線Xを引く。

【図13】▼直角線XとバストラインBLとの角度2等分線Yを引く。
▼線分Yをアームホールに接する位置まで平行移動する。※この線分Yがカマ底の反転軸となる。

【図14】ハンドによるパターンメーキングの場合の、角度2等分線の簡単な引き方。XとBLの平行線を同間隔で引き、それぞれの交点どうしを直線で結ぶ。

【図15】▼反転軸でカマ底とBLを反転する。※反転したBLは当然RSに直角になる。
▼任意のラグラン線を引く。

【図16】▼反転したBLから1センチ上に平行線FWを引く。このFWが前袖幅線となる。※1センチという数値は経験値である。傾斜度が緩いほどこの数値は小さくなる。
▼FWとRSとの交点Zから肩先までの距離をHとする。このHが袖山の高さである。
▼カマ底と寸法が同じになるように袖底のカーブを引き直す。
▼肩先をカーブで引き直す。

図11~16を「パターンマジックⅡ」で作図

【図17】▼後ろ身頃の肩先から袖丈線RSを、とりあえず任意の傾斜で引く。
▼肩先から袖山の高さHにより点Zを求め、直角線BWを引く。

【図18】▼肩先を基点にRSとBWを一緒に回転する。このときにできるBWとBLとの角度2等分線Yがアームホールに接する位置を見つける。※アームホールとの接線が反転軸となる。

【図19】▼前袖と同様に反転軸でカマ底を反転する。
▼任意のラグラン線を引く。

【図20】▼後ろ身頃と袖のラグラン線の間に1センチの隙間が空くように袖底のカーブを引き直す。※距離が長くなった分はイセにする。
▼肩先をカーブで引き直す。

【図21】▼袖を抜き取り、RSを1センチ平行に出して袖幅を広くする。※袖の傾斜度が強いほど袖幅が細くなるので、RSを平行に出すことで調整する。
▼袖口寸法を決め、袖口をたたむ。

【図22】完成した袖を身頃に合わせた状態。パターン展開による作図とほぼ同等のパターン形状になる。

――ラグランスリーブが抱える構造上の問題点を踏まえた上で、出来る限りシルエットと着心地に優れたパターンを引くことは、今後も永遠に続く課題だと思う。CADを使っているパタンナー諸兄姉は(もちろんハンドでも構わないが)、是非この方法を1度試してみていただきたい。異論も疑問も出てくるかも知れぬが、ラグランスリーブをもっと掘り下げて考えていくために僅かでも参考になれば、筆者はこの上ない幸せである。