第十一章 4面構成テーラードジャケットとデジタルトワルチェック
フラット・パターンメーキングとデジタルトワルチェック 著:関川 政春
- 学習・知識
今回は、婦人服特有の曲線を生かしたファンシーテーラードといわれる4面構成ジャケットを取り上げます。ジャケットスローパーからパネルラインへ展開し、フェミニンなディテールも加味したパターンメーキングとデジタルトワルチェックをテーマに解説します。それでは、始めましょう。
第十一章 4面構成テーラードジャケットとデジタルトワルチェック
1.ファンシーテーラードとマンテーラードの違いとは
「テーラードジャケット」が婦人服に登場するのが19世紀。紳士服の機能性に富んだ構造・ディテールを取り入れたそのジャケットが、女性の「着飾る服」から「活動的な服」という当時の社会ニーズをとらえ、今日までレディース・ファッションアイテムとして定着している。その中で、女性らしさを生かしたテーラードジャケットが今回のファンシーテーラードである。おもに4面分割された構造線いわゆるパネルラインにより、表現される。
婦人服における2タイプのテーラードジャケット
(1)マンテーラードジャケットとは
肩幅が広く、袖肘下にかけて適度な捻りが有り女性的な体躯を消した3面構成の男性的で構築的なシルエットを表現したテーラードジャケット。
(pdf書籍3面構成テーラードジャケットを極めるV6で詳細解説しています。ご参照下さい)
(2)ファンシーテーラードジャケットとは
婦人服特有の胸ぐせ処理や曲線的な体躯をシルエットに表現した4面構成のパネルラインやプリンセスラインの女性的でソフトなテーラードジャケット
【図1】マンテーラードジャケットのデジタルトワルチェックをしてみよう。
パターン作成ポイント
①.肩幅を広くとる。
②.サイドピースを細くして、婦人服特有の胸ぐせを分散する。
③.いかり肩にするため厚手の肩パットを入れる。
④.袖肘下にかけて捻りを入れる為、袖の目(赤線)をイレギュラーにつくる。
⑤.袖前振のため、肘下の中心線を前側へ移動する。
【図2】今回のテーマであるファンシーテーラードジャケットのデジタルトワルチェックをしてみよう。
パターン作成ポイント
①.肩幅を狭くとる。
②.婦人服特有の胸ぐせをとるためパネル切替線とする。
③.なで肩にするため肩パットは、薄手か無しにする。(本編無しで解説)
④.袖の目(赤線)をレギュラーにつくる。
⑤イレギュラーヘムライン、フレアーなど
2.ファンシージャケット用スローパーに修正する
1)パターン修正の第一ポイント
修正の第一は、ハイショルダーの袖付け(肩幅狭める)にある。
【図3】❶ジャケットスローパーをハイショルダーに調整し、肩線カットの分量を袖山に加える。
❷襟ぐり線が、前後ネックポイントで3mm、サイドネックポイントで5mmくり下げてある。
❸袖の据わり、振りを確認する。
3.パネルラインの身頃へ展開する
(2)パターン修正の第二ポイント
修正の第二は、胸ぐせダーツのマニピュレーションで、女性的なバストトップ形状を作りこむこと。
【図4】❶スローパーのウエストダーツ位置を20mmハイウエストに移動し、脇側へ図のように移動する。
後中心線を15mmくせ取り、肩ダーツ先を回転中心(赤丸印)に、袖ぐりへ5mm、襟ぐり線へ3mm分散し、残りをイセ込み分とする。
バストポイントを回転中心(赤丸印)にして、襟ぐり線に10mm、袖ぐり線へ10mm、残りをサイドダーツ位置へ分散する。
❷後パネル線をウエストダーツ線を利用してひく。前パネル線は、ウエストダーツ先ⓐを回転中心にして、サイドダーツを閉じ反動をⓑに開き、ウエストダーツ線を利用して作成する。
【図5】パネルラインのデジタルトワルチェックをする。アンダーアームホールと袖底のマッチングで、バランスを確認する。
【図6】持出し幅25mmを出し、ウエスト位置より25mm上を釦とする。
❶3Dメニュー[線作成機能]で、ジャケット丈(基点550mm)を入力し、❷トワル後中心線をクリックして、❸後からヘムラインとフロントカットラインを描き、❹修正操作でノード点(青点)をつながり良く直す。
❺型紙に反映タブをクリック、❻2Dパターンにデジタルトワルのヘムとフロントカット線が表示される。
【図7】❶身頃各パーツの脇線を突き合わせ、裾線つながりをトワル裾のガイドラインを目安に修正(赤線)する。
❷各パーツを取り出し、パターン整理する。
❸デジタルトワルチェックをして、バランスを見る。
4.テーラードカラーを作成する
【図8】❶3Dメニュー[線作成機能]で、トワルに、ラペル返り線(緑線)をひく。
❷ゴージラインをひく。❸ラペル仕上がり線をひく。❹上襟線をひく。
❺型紙に反映タブをクリック、❻2Dパターンに表示される。
【図9】❶前後襟ぐり線を、5mmくり下げる。Nポイントから垂線で襟腰分25mmをひき、羽根幅40mmを肩線にぶつける。
❷襟外回り線を後身頃にひき、ラペルを反転し、ゴージラインから襟ぐり線をひく。
❸襟付け線を反転し襟付け寸法ⓐと襟外回り寸法ⓑの円弧をそれぞれ描く。襟の後中心線に直角補助線をひき、襟を図のようにとり完成させる。
(3)パターン修正の第三ポイント
修正の第三は、襟とラペルの小丸カットやイレギュラーヘムライン、ペプラムのフレアーなど女性的なディテール使い。
【図10】❶後、後脇、前脇各身頃を、ウエスト線から取り出し、図のように突合せ1つのパーツにする。
❷メニュー[展開(間口)]6等分で、各50mmづつ開く。
❸完成パターンでデジタルトワルチェックをする。
【図11】❶袖原型を用意し、❷袖口線の½125mmをひき、中点に直角に交点ⓧと結び袖中心線とする。2枚袖の前後シルエット線(赤線)をひく。
❸内袖と外袖線をひく❹内袖、外袖を取り出す。
❺デジタルトワルチェックする。
関川 政春(セキカワ マサハル) 2002年~2017年 国際トータルファッション専門学校 校長 現在は校長を退任し、同校の非常勤講師としてアパレルCAD教育に携わる 2017年6月にデジタルトワル研究についての書籍出版と同時にウェブサイトを公開 ※下記参照 |
活動 | ファッションビジネス学会全国大会(2016年開催)で、3Dトワルを活用した「婦人テーラードジャケットのパターン&3Dシミュレーション検証」を発表 2017年11月25日開催のファッションビジネス学会全国大会において、デジタルトワルの活用事例を発表 |
ウェブサイト | http://masa-cad.com/ |
出版書籍 | https://masacad.thebase.in/ |