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PATTERN MAGICⅡ 3D のご紹介“3Dによる着心地の視覚化”

日本モデリスト協会 2019年度技術研修会

  • レポート

2019年11月23日に日本モデリスト協会による「2019年度技術研修会」が開催されました。今回のテーマは『テーラードジャケットの外観と着心地』-立体・平面・3Dで検証-、講師はKKCスタジオ代表/本協会運営委員の菊地正哲様でした。3面マニピュレテーラード・ジャケットをドレーピングとパターンメーキングの両面からのアプローチで設計、特にVゾーンの設計に焦点を当て、3タイプに分けたパターンを作成し、3Dによる外観の違いと実際のサンプルによる着心地の比較をご紹介されました。

東レACSはパターンマジックⅡ3Dの特長をご紹介し、パターンマジックⅡ3Dを用いて上記の「3Dによる外観の違い」を見ていただきました。本コラムはその内容を一部ご紹介します。

タイトル:PATTERN MAGICⅡ3D のご紹介"3Dによる着心地の視覚化"

~前半省略~

パターンマジックⅡ3Dの製品特徴を活かし、我々は衣服設計工程のリードタイム短縮をご提案しています。下の図は、衣服設計工程の企画~型紙作成までの流れ図になります。

デザイナーとはトワルを通して、デザイン通りの衣服になっているかを確認していると思います。ラフパターンを作成してから、トワルを作成しながら形状を変更したり、縫い代設定したり、多少の作りこみが入るかと思います。

そのあと、トワルを作成し、デザイナーと共有しながら全体的なバランス、ボリューム、ディテールの位置等を確認し、変更があれば再度同じ工程を繰り返すといった形で業務をこなされているのではないでしょうか。

そこで、我々はトワル作成の前のデジタルトワル作成によるデザインチェックをご提案しています。

デジタルトワルは型紙に忠実に衣服形状を表現するので、デザインのバランス、ボリューム、ディテールの位置を確認することができます。

その際は、縫い代等は必要はなく、デジタルトワルの作成も5分~10分程度でできますので効率よくデザインチェックを行うことができます。

デザインを先に固めることができれば、時間のゆとりが生まれ、今まで以上に品質向上の時間を確保できますし、トワルやサンプル作成の回数削減にもつながります。

しかし、本当か?と疑問にもたれているのではないでしょうか?

そこで、そのためには下の図のサイクルができることが必要と考えています。

まず型紙を作成し、着せ付け、デジタルトワルを作成する、その後修正箇所を見つけ、修正するといったチェックができなければ役に立つツールとは言えません。

デジタルトワルで型紙の良し悪しが分かるかということが大前提だと言う事です。

近年、展示会等で3DCADを見る機会が増えていると思いますが、皆さんもこの点については疑問に思われたことがあると思います。

ここで必要なのは、型紙に忠実な立体形状の表現(型紙の違いが表現できる)ということになります。

本日は、弊社のデジタルトワルの衣服形状の表現についてご説明します。

まず、型紙に忠実な衣服形状の表現を確認するために、我々は、設計工程で起こる不具合について調査しました。ここでの不具合とはトワルで型紙を立体化した際に現れる想定外の悪い形状のことをさしています。

実務経験豊富なパターンナーに設計工程で起こる代表的なトワル上の不具合の一覧の作成してもらいました。下の図はその一部です。

また、不具合の優先順位を複数の会社にご協力いただき、ヒアリングし集計しました。その結果について、カテゴリでランキングすると、身頃のアンバランス、袖山形状、袖付きの不良、肩傾斜の不良、衿ぐりの不良の順になることが分かりました。

デジタルトワルの立体再現性を確認するため、型紙・トワルを作成し、シミュレーション結果が同様になるかということを検証をしています。

下の図は検証方法を説明するものです。作成した型紙・トワルは正常なものと、先ほど調査した不具合を含む型紙・トワルを作成し、シミュレーション結果と比較します。

正常なものは正常に、不具合は不具合が表現されるといった精度を高めることで、立体形状の確認が可能なツールになると考えています。

このような検証を繰り返し実施することで、立体再現性を向上する取り組みを続けています。本日は、不具合のカテゴリ別に3点の検証結果をご説明します。

不具合の検証結果を説明する前に、デジタルトワルの主な不具合確認方法について説明します。デジタルトワルのシルエットによる確認以外に、デジタルならではの機能があります。

下の図左は、デジタルトワルのゆとりチェック機能です。サーモグラフィのようにボディとの距離を色表示することで、ボディとの密着度を確認することができます。

右は、デジタルトワルの計測機能です。デジタルトワル上の道のりや、デジタルトワルとボディの間の距離を計測することができます。

このような機能を使いながら、不具合を確認していきます。

身頃の前が跳ねるという不具合の検証結果をご説明します。

下の図はトワルに表れた不具合について示すものです。トワルの前が跳ねていることが分かります。この不具合がデジタルトワルで判別できるかが重要です。ではデジタルトワルではどのようになるでしょうか。動画で説明します。~説明省略~

次に、肩傾斜に関する不具合の検証結果をご説明します。

下の図はトワルに表れた不具合について示すものです。この場合、サイドネック付近に浮きが生じ、バストラインが上がるといった現象が発生しました。ではデジタルトワルではどのようになるでしょうか。動画で説明します。~説明省略~

次に、衿ぐりに関する不具合の検証結果をご説明します。

下の図はトワルに表れた不具合について示すものです。前衿がきつく、後衿が浮くといった現象が発生しました。ではデジタルトワルではどのようになるでしょうか。動画で説明します。~説明省略~

これらの研究開発成果を活用した事例をご紹介します。

これは、メンズジャケットの個人対応衣服設計への活用事例を示したのが下の図です。3Dスキャナを用いて個人のボディを作成し、型紙を着装したところ、真ん中の図のように、首の後ろにツキジワが確認できました。

それを直す修正を繰り返し、最終的には右図の形状を得ました。この事例で作成したジャケットが本日着用しているもので、セコリジャパンスクールの授業で作成したものです。

素人である私がこのジャケットが作れたのは、講師の先生方の親身なサポートと型紙作成の理論を、3DCADを用いて繰り返し学習することができたからと考えています。

短時間で何度も試行錯誤を繰り返すことができますので、型紙の形状を変えると、立体形状がどのように変わるのかといった立体⇔平面変換能力の養成に役立つツールであると考えています。皆様の衣服設計の1助になれば幸いです。

商品紹介の最後に、今後の展望についてご紹介します。

デジタルボディやデジタルトワルといった技術を活用し、サイズマッチング、セミ・オーダー、顧客体形分析、人材育成等様々な分野にご活用いただくことを想定しています。

~途中省略~

最後に、メインテーマの3Dによる着心地の視覚化についてご説明します。

下の図は、Type-Bの着装結果です。衿~肩までのゆとり量を見ると、胸の上部に浮きが出ていることがわかります。

下の図は、Type-Cの着装結果をご覧ください。こちらは、衿~胸のあたりにかけてボディに密着していることがわかります。

下の図は、Type-BとCの比較画像です。Type-BとType-Cでは主に衿~胸回りの密着具合に大きな差があることが見て取れます。

着心地は個人の好みもありますので正解はありません。しかし、どのような意図で衣服を設計するか、意図通りの衣服になっているのか、このような意図をもって衣服を作ることが重要である、と本日のセミナーでは学ぶことができました。我々の開発したツールが皆様の設計を深める上の1助になれば開発者冥利に尽きることはないと思います。