実践!レディース・パターン教室07(テーラード・ジャケットの作図・・・その5)~アパレル工業新聞コラボ企画~

パターンメイキングをアパレルCADで実践

  • 新聞掲載

アパレル工業新聞 2018年1月1日発行 5面
この記事・写真等は、アパレル工業新聞社の許諾を得て掲載しています。

テーラード・ジャケットのパターンメーキング・・・その5

前回から続けて襟の作図の説明です。前回はテーラード・カラーの作図における重要なポイントとして、ラペルまで含めて全部を襟として捕らえることと、「襟ぐり線」と「返り線」をはっきり区別することを述べました。今回は襟のパターン形状の変化によって、実際の外観がどのように変わってくるかを解説します。更に、テーラード・カラーのバリエーションとして、返り線が緩やかな曲線を描くカーブド・ラペルについて、その作図法の一例も紹介します。

5.襟ぐり線の決定

コンパスを使った襟の作図では、返り線と肩線を延長した交点をC点とした。このC点の位置を変えると襟のパターン形状が変わるのは前回説明したとおりである。では、C点の位置を実際に変えてみて、それにより外観がどのように変化するのか検証してみよう。

【写真1】C点の位置を返り線と肩線を延長した交点に設定した襟のパターンと、トワルによる外観。襟腰と首との隙間が均等になっている。これを標準形とする。

【写真2】C点の位置を標準形より高く設定した襟のパターンと、トワルによる外観。襟腰がC点の位置で首から離れているのが分かる。

【写真3】C点の位置を標準形より低く設定した襟のパターンとトワルによる外観。襟腰と首との隙間が狭く、C点の位置に向かって徐々に離れているのが分かる。

column_kikuchi_7-1.jpg

column_kikuchi_7-2.jpgcolumn_kikuchi_7-3.jpg

写真2を「パターンマジックⅡ3D」で実践

column_kikuchi_7-16.png

写真3を「パターンマジックⅡ3D」で実践

column_kikuchi_7-17.png

【図18】ゴージラインが高い位置にある場合、C点の位置と襟の形状はどうなるか。

①はC点を標準の位置に設定しているが、襟と襟ぐり線のつながりが悪く、ゴージラインの位置で角になっている。そのため、襟腰(グレー部分)の形状がいびつになり、襟が崩れてしまう。

②は同じくC点を標準の位置に設定しているが、襟付け線をえぐったカーブにすることで、襟ぐり線とのつながりを良くしている。一見、見慣れない形状の襟になるため戸惑うが、襟腰(グレー部分)がスムーズなカーブを描くので、襟が崩れることはない。

③はC点を標準より高い位置に設定している。襟腰(グレー部分)はもっともスムーズなカーブを描くが、C点の位置により後ろに抜けた襟になる。

――スリムなジャケットの場合、ゴージラインは高い位置に設定することが多い。そのようなデザインを一般的な囲み製図で作図すると、大抵の場合は③のような襟になる。囲み製図ではそのパターン形状から出来上がりの外観を想像することはなかなか難しいが、C点の位置を基準とした考え方を用いることで、どのような襟になるのか容易に想像することができる。ちなみに、筆者は躊躇なく②の襟を選択する。これは囲み製図では得られない形状である。

column_kikuchi_7-4.jpg

6.襟腰切り替えの展開

前節の【写真1】~【写真3】を見てお分かりだろうが、襟と首の間には少なからず空隙がある。これは[第2章 襟とラペルの作図]の【図2】で示したように、天幅を広げることで首と肩への負荷を軽減するためだが、このままでは首からちょっと離れ過ぎている感じである。そこで、襟を首に沿わすために襟を上下に分離して、返り線をたたむ操作を行う。

【写真4】襟の返り線をピンでつまみ首に沿わせた状態。一枚襟をこの状態にするには返り線をいせ込むしかないが、現実的には不可能。そこで、襟を上下に分離して、それぞれをたたむことで首に沿った襟にするのだ。

column_kikuchi_7-5.jpg

【図19】C点の位置を印した襟のパターン。

【図20】▼C点を基準にして、展開線を返り線に対して直角に入れる。展開線は展開量に応じ1箇所~3箇所入れる。間隔は3センチとする。※SNP(サイドネックポイント)の位置とは無関係である。▼返り線から7ミリ下に襟腰切り替え線を入れる。後ろ中心~SNP(サイドネックポイント)附近までは平行に入れ、ゴージラインでは表から切り替ええ線が見えやすいので1センチ控える

column_kikuchi_7-6.jpgcolumn_kikuchi_7-7.jpg

【図21】▼各展開線に菱型のダーツを入れる。ダーツ量は返り線をたたむ量を振り分けて決める。ここでは前から2ミリ・4ミリ・4ミリ(合計1センチ)としている。※数値は全て参考値。▼たたむ範囲を示す合印を切り替え線上に入れておく。

【図22】襟を上下で分離する。

column_kikuchi_7-8.jpgcolumn_kikuchi_7-9.jpg

【図23】ダーツをたたむ。上襟はダーツを完全に閉じると切り替ええ線の重なり分が短くなるので、その分を伸ばしにする。

【図24】上襟と襟腰切り替えの完成図。

column_kikuchi_7-10.jpgcolumn_kikuchi_7-11.jpg

図19、20を「パターンマジックⅡ」で作図

図21、22を「パターンマジックⅡ」で作図

図23、24を「パターンマジックⅡ」で作図

また、衿腰切り替えの展開を行ったことにより上襟が大きくカーブして、フラット・カラーに近い形状になっている。この形状から、テーラード・カラーのことを「カマ襟」と呼ぶこともあるようだ。

――衿腰切り替えは前端が反り上がった弓状の形をしているので、「月腰」とも呼ばれている。「月腰」には今回のようにゴージラインまで伸びているものや、ゴージライン手前で下にカーブさせて襟ぐり線で消すものもある。また、衿腰切り替えの展開は、実際には表襟に施す処置であり、本来であれば生地の厚みに応じた返り分等の展開を済ませた後に行う操作であるので、お間違いのないように。返り分等の展開は工業用パターンの範疇になるため、ここでは省略した。

7.カーブド・ラペルの作図の一例

レディスにおけるジャケットのデザイン・バリエーションは実に様々である。本編のテーマであるメンズ・ライクなテーラード・ジャケットとは少々趣向が異なるが、ラペルの返り線が緩やかなカーブを描くカーブド・ラペルについて、その作図法の一例を紹介する。

【図25】返り線のグレー部分をカットする。

【図26】カットする部分をパターンに写し取る→カットする部分を返り線に移動する。

column_kikuchi_7-12.jpg
column_kikuchi_7-13.jpg

【図27】襟の外回りを開く。※襟ぐり線がカーブすることにより襟とのつながりが悪くなり、このまま襟を付けると、襟腰が押し上げられて外回りが足りなくなる。

【図28】カーブド・ラペルのパターン完成図。ダーツはラペルに隠れる位置まで短くする。

※ダーツを短くするほどラペルの返り止まりの位置が上がってくるので注意。

column_kikuchi_7-14.jpgcolumn_kikuchi_7-15.jpg

――カーブド・ラペルは他にも様々な作図法があるが、今回はもっとも単純で簡単な「フィッシュダーツ方式」を紹介した。より詳しい説明や他の方法については、別の機会に単独のテーマとして取り上げて解説をしたい。

兎にも角にも、ここまで襟の説明が終わった。次からはいよいよ(またしても、やっと)袖の説明に入る。