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No.055 再びラグランスリーブの作図 その2

実践!レディース・パターン教室 著:菊地 正哲

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アパレル工業新聞 2026年3月1日発行 8面
この記事・写真等は、アパレル工業新聞社の許諾を得て掲載しています。

時代はともあれ、後ろに抜けない服を作ることは、パターンメーキングにおける基本的な目標であると思いますが、ラグランやドルマンなどのいわゆる「続き袖」は、その構造から後ろに抜けやすい性質を持っているので、パタンナーにとっては誠に厄介な存在であります。前号の最後に、その防止策として袖を前に振ることが有効であるとし、後ろ肩にいせを入れることで袖が前に振れる原理を説明しました。今回は、その原理をさらに詳しく掘り下げ、その上で前号の相関表を基にしたラグランスリーブの傾斜度別の作図例を紹介します。
それにしてもラグランスリーブは本当に着やすい袖なのか、はなはだ疑問ですな。何故このような袖の構造をとらなければいけないのか、その必然性が私には分かりません。そんなことを思いながら、ひたすらラグランスリーブのパターンを引き、シルエットの検証を行ってまいりました。その中で、機能的なメリットもいくつか感じてはいます。まず、袖の傾斜度によっては肩部分の地の目がバイアスになるので、肩回りの圧迫感が減る(想像です)こと。そして、袖付けの縫製がセットインより楽(私見です)なこと。更に、アームホールの丸い縫い目がないので、着脱の際に腕の通りが多少はスムーズになる(これも私見です)、ということです。あと、肩の縫い目がない一枚袖のラグランなら、雨水の侵入を防げることもメリットとして挙げられますかね。
そんなラグランスリーブですが、ファッションの見地からすれば素敵でお洒落な袖であることには違いありません。何だかんだ言っても、実は私はラグランスリーブが結構好きです。何が言いたいのでしょうね…。

4.後ろに振れたラグラン袖を前振りに直すには?

ラグランスリーブが後ろに振れてしまう場合、どのように修正したら前に振れるかを説明する。これは3Dでは検証できないので、実際のトワルを使って修正結果を検証する。

【4-1】後ろに振れた袖と修正後の袖のトワル画像。

実践!レディース・パターン教室55[4-1]

【4-2】トワルに修正を施した部分の拡大画像。
後ろに振れる原因は、後ろ肩先の突っ張りにある。そこに縦に切り込みを入れると口が開き、突っ張りが解放されて袖は前に振れる。

実践!レディース・パターン教室55[4-2]

【4-3】トワルに入れた切り込みをパターンに反映した図。
 切り込みが開いた分を菱形の交線としてパターンに書き込む。

実践!レディース・パターン教室55[4-3]

【4-4】修正例①:肩を基点に交線を下で開いて重なりをなくす。
下が開いた分だけ身幅も広げる。後ろ肩にいせを入れられない場合はこの扱いになる。前後の身幅のバランスが変わるので、シルエットに影響することを承知しておく。

実践!レディース・パターン教室55[4-4]

【4-5】修正例②:ラグラン線を基点に交線を肩で開いて重なりをなくす。
 肩が開いた分をいせにする。後ろ袖線の角度が増える(傾斜が急になる)ため、一見すると更に後ろに振れてしまいそうだが、実際は前に振れる。

実践!レディース・パターン教室55[4-5]

――どちらの例が適しているかはデザインや素材で判断すればよい。ここで紹介している作図法はすべて修正例②の結果を初めから想定しているので、後ろ肩線のいせを必ず入れる設計にしている。

5.傾斜度別ラグランスリーブの作図例

前号の相関表の数値を基にして、4通りの袖の傾斜度で作図を行った。前述のように肩に縫い目があるものはすべて後ろ肩先に5ミリのいせを入れている。また、肩線を前に回す操作は行っていない。製図のグレーの三角形はセットインスリーブの袖山を仮想したもので、ラグランスリーブにおける袖山の高さと袖幅を決める案内線の役割をしている。三角形の斜辺の長さは前後のAH(アームホール)と同寸である。また、身ごろの肩傾斜は肩先ですべて5ミリ持ち上げている。

【5-1】①肩傾斜の延長(1枚袖)の作図と袖の完成パターン。
■前袖線=5度
■後ろ袖線=マイナス5度
■袖山の高さ=10%
■肩先延長=0センチ

実践!レディース・パターン教室55[5-1]

 【5-2】②傾斜度45度の作図と袖の完成パターン。
■前袖線=20度
■後ろ袖線=10度
■袖山の高さ=20%
■肩先延長=前1センチ、後ろ1.5センチ

実践!レディース・パターン教室55[5-2]

【5-3】③傾斜度30度の作図と袖の完成パターン。
■前袖線=30度
■後ろ袖線=30度
■袖山の高さ=30%
■肩先延長=前1.5センチ、後ろ2センチ

実践!レディース・パターン教室55[5-3]

【5-4】④傾斜度20度の作図と袖の完成パターン。
■前袖線=30度
■後ろ袖線=20度
■袖山の高さ=36%
■肩先延長=前2センチ、後ろ2.5センチ

実践!レディース・パターン教室55[5-4]

6.セットインスリーブに近いシルエットにするには

身ごろのラグラン線と袖側のラグラン線は同寸が基本だが、傾斜度が強くなるほどセットインスリーブのように肩を包み込むようなシルエットに近づけたくなる。その場合には、後ろ袖側のラグラン線の長さを5ミリほど長くして、その分を中間部でいせるとよい。

【6-1】セットインスリーブからラグランスリーブに展開した図。
この展開図は、セットインスリーブのシルエットを極力残したままラグランスリーブにした場合、重なりや隙間がどこにできるかを表したものである。この図によれば、後ろラグラン部分が展開によって切り開かれて距離が長くなっているのが分かる。その分をいせることで元のセットインスリーブのシルエットに近づくという理屈である。

実践!レディース・パターン教室55[6-1]

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