実践!レディース・パターン教室25(パンツの構造理論とパターンメーキング その3)

パターンメイキングをアパレルCADで実践

  • 新聞掲載

アパレル工業新聞 2021年1月1日発行 7面
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前回は運動量とシルエットの関係を、3つのブロックによる構造理論を基に検証しました。その結果は、きれいなシルエットと動き易さはどうにも両立しそうにないと思わざるを得ないものでした。無論、そこを何とか両立するようにするのが技術者の使命であることは分かっているのですが、私の技術力が足りないのか、はたまた感性がないのか、どうにもその方法が見つけられません。人間の皮膚がそうであるように、しわがなくても運動量を与えるには生地の伸縮性に頼る方策しか今のところないような気もします。いずれにしても今後も研究すべき課題だと思っています。まずはパンツの構造を理解することが先決。その上でデザインの要素をどのように加えていくか、そこにパタンナーの感性が必要になってくるのではないでしょうか。

そこで今回は、3つのブロックによる構造理論によってパンツの様々なシルエットの構造を検証します。シルエットによって3つのブロックがどのように組み合わされるのか、特にBブロックの形状がどのように変化するのか、それによって何が見えてくるのかを確認するのですが・・・その前に、パンツに関する素朴な疑問をひとつ...。

5.パンツの後ろ中心は何故倒れているのか?

あまりにも基本的な疑問だが、的確に答えられる人はいるだろうか?お尻が出っ張っているから倒れているというのが多くの人の認識だと推測する。しかし、筆者の考えは「後ろ中心が倒れているのは気のせい。」である。実はパンツの後ろ中心は倒れていない。どういうことか解説しよう。

【5-1】3つのブロックによる構造理論は、Bブロックの形状でパンツのシルエットが決定することは既に述べている通り。この図はBブロック(股部)をたたんで形状変化する前の状態である。これにCブロック(脚部)を合体する。この状態では、すべてのブロックが水平・垂直である。

【5-2】BブロックをたたんでCブロックを合体した状態。Aブロックは水平・垂直のままなので前中心も後ろ中心も倒れていない。

――要は地の目を何処に置くかの問題で、倒れているかいないかは地の目を縦に置いたときの見え方による。見方によっては脚部がハの字に開いているのが正解と言うこともできる。屁理屈のようだが、重要なのは後中心の倒しではなく、Bブロックの形状こそがパンツのシルエットと運動量をつかさどっているということである。

6.シルエット別の構造

どんなシルエットのパンツであっても、その構造はすべて3つのブロックの組み合わせで分析が可能である。ここおっ区では①ベーシックパンツと②ワイドパンツ、そして③スリムパンツの3種類のシルエットを比較検証する。

【6-1】パンツの3種類のシルエットの側面図。

【6-2】各シルエットのBブロックのダーツ分量を比較した図。分量が違うので、たたんだときの形状が異なってくる。

【6-3】①ベーシックパンツの構造図。それぞれのBブロックとCブロックの隙間の大きさに注目する。

【6-4】②ワイドパンツの構造図。

【6-5】③スリムパンツの構造図。

①~③パンツを「パターンマジックⅡ 3D」でシミュレーション

――①のベーシックを標準とすると、②のワイドは隙間が小さく、③のスリムは最も隙間が大きい。BブロックとCブロックの隙間がヒップ下の余りじわになるのは既に述べているが、この隙間の大きさと後中心の倒し(本当は倒れていない)が比例していることが分かる。ワイドパンツは倒しが少なく、スリムになるほど倒しが多くなるのはこのためである。

【6-6】番外編として屈伸型のパンツの構造を分かり易い図にしたもの。屈伸型パンツとは、主にスキーパンツやレーサーパンツなど前屈姿勢に合わせた形状のパンツのことである。

【6-7】屈伸型パンツの構造図。前面、側面、後面、内面の4つの面に分割して前傾の姿勢を作る。このように、ブロックの組み合わせによる構造理論は、どのようなシルエットにも対応することが可能である。

7.ヒップ下の余りを減らす方法

BブロックとCブロックの隙間の大きさを減らす方法を考えてみよう。この隙間を減らすことが出来れば、ヒップ下の余りじわのないきれいなシルエットのパンツになるはずである。但し、それによって動き易さが損なわれる可能性は否定できないので、必ずしも減らせばいいというわけではないことを断っておく。

【7-1】①脇を基点に股下を重ねる。重ねることで股下が短くなった分は伸ばしにする。最も単純な方法。

【7-2】②股ぐりから縦に展開線を入れてわたりを切り開く。隙間は減るが、わたり幅が広くなってワイドパンツと同じ状態になるので、これでは本末転倒。

【7-3】③股ぐりに向かって展開線を入れて下端を基点に股ぐりをたたむ。股ぐりが短くなった分は伸ばしにする。隙間は劇的に少なくなる。

【7-4】④パンツの中心線で分割して4枚接ぎにする。全てのブロック間の隙間を少なくするのに最も適した方法。

【7-5】⑤股下の縫い目をなくして3枚接ぎにする。中心に縫い目を入れたくない場合はこうするのも一案。デザインとしては滅多にお目にかかれない変り種。

④と⑤パンツを「パターンマジックⅡ 3D」でシミュレーション

――以上、3つのブロックによってパンツの構造がよく理解できたはずである。更に、この理論には「くせ取り」という概念は存在しないことを付け加えておく。あとはデザイン要素をどのように取り入れたらかっこいいパンツになるかはパタンナーの腕次第である。

次回は、この理論を応用したパンツの作図方法を紹介する。