実践!レディース・パターン教室24(パンツの構造理論とパターンメーキング その2)

パターンメイキングをアパレルCADで実践

  • 新聞掲載

アパレル工業新聞 2020年11月1日発行 5面
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前回はパンツの構造を3つのブロックに分割して考える理論を解説しました。今回は運動機能とシルエットの関係について検証します。パンツのシルエットにおいて、きれいなシルエットとは何かを考えるとき、それは体型を美しく見せることはもちろんですが、立っているときに余分なしわがないことがきれいなシルエットのひとつの基準であることは異論がないと思います。無論、しわにも美しいしわとそうでないしわがあるのは承知していますが、パンツに美しいしわがあるとしたらそれはどんなしわなのか、マニアックな美学を持っているひとには区別ができるかもしれませんが、私には残念ながらそのような感性は持ち合わせておりませんので、シワはシワとしか見ることができません。しかし、運動のために必要なしわと不要なしわの区別なら、この構造理論によって判断することが可能です。今回は3つのブロックを結合することで、2枚のパーツだけで構成されたパンツのパターンに隠れているしわの正体を明らかにします。美しさに関する議論はひとまず置いといて、ここは具体的な検証結果をもとにパンツのシルエットと向かい合っていきましょう。

3.3つのブロックの結合

言うまでもなく、人間の脚は日常生活の中での動作では殆ど前に蹴り上げることが多く、後ろに蹴り上げることはあまりない。お尻が出っ張っている理由は、四つ足歩行だったものが二本足で立った時に、脚を前に蹴り上げる分の肉が寄せられて出っ張ったためと考えられる。年をとり運動量が減ると、お尻の肉が下がり出っ張りが少なくなるのも合点がいく。このように、お尻の高さと運動量は密接な関係がある。分割した3つのブロックを再び結合することで、その関係性がはっきり見えてくる。

【3-1】パンツを構成する3つのブロックを結合した状態。それぞれの形状から分かることは、後ろパンツのAブロックとBブロックはヒップラインでぴったり合わないことと、BブロックとCブロックの間には前後とも隙間が空くことである。特に後ろの隙間の大きさが顕著である。

――単純に考えればこれの外周をなぞればパンツのパターンになるわけだが、この隙間がシルエットにどう影響するのか、また運動量とどのように関係してくるのかを検証する。

【3-2】後ろパンツのAブロックとBブロックの3通りの結合方法。

①は後ろ中心に隙間を空ける結合方法。股ぐり寸法が長くなり、履けば後ろ中心が浮くことが想像できる。

②は脇に隙間を空ける結合方法。脇の寸法が長くなり前パンツとの縫合が不可能。隙間をダーツにする方法もあるが、そのようなデザインは特殊な例である。※某海外ブランドが意匠登録をしている。

③は両端をぴったり合わせる結合方法。股ぐり寸法も脇丈も変えずに結合するにはこの方法しかないが、ヒップラインで縦糸が重なって短くなるので、履くとヒップトップが突っ張ることが懸念される。しかし、実際には生地の動きがあるので、ある程度の重なりは許容できると思われる。

――この3通りの方法からすると、世の中の殆どのパンツのパターンは①か③のどちらかで結合されていることが推測できる。しかし、これを外周だけをなぞったパターンにしてしまえば、この2つの違いは僅かな形状の違いでしかなく、実際には結合方法の違いなどあってないようなものになってしまう。従って、次の検証用のパンツは③の結合方法でパターンを作成した。

【3-3】3つのブロックを結合して1枚のパーツにして縫ったパンツ。これを『合体パンツ』とする。やはりBブロックとCブロックの間の隙間が余りになっているのが分かる。特にヒップの下の余りが顕著に現れている。

【3-4】3つのブロックを結合せずにそのまま切り替えて縫い合わせたパンツ。これを『3分割パンツ』とする。余分なゆるみやしわがなく下半身を覆ったシルエットになっている。

4.運動量とシルエットの関係

3分割パンツのパンツは、直立姿勢では確かにしわがなく体型に沿ったきれいなシルエットだが、運動したときの着用感はどうなのかが気になるところである。そこで、合体パンツと3分割パンツを実際のモデルに着用してもらい、直立姿勢と着座姿勢の両方の姿勢で着用感と外観の違いを検証する。

【4-1】直立姿勢での側面シルエットの比較。やはり合体パンツはヒップ下の余りが多く、その余りが下に落ちて脚部に斜めのしわが発生している。一方、3分割パンツはしわがなく脚部がまっすぐ下に落ちている。

【4-2】椅子に座った状態での比較。腹部のふくらみと裾の高さに注目する。3分割パンツは合体パンツより腹部が大きくふくらんでいる。また、3分割パンツは合体パンツより裾が上に引き上げられて位置が高くなっている。

【4-3】椅子に座ったときにパンツにかかる張力の位置と方向。この方向線の距離が長いほど運動機能が高いと言える。

【4-4】合体パンツと3分割パンツにかかる張力の方向線の比較。合体パンツの方が3分割パンツより方向線の距離が長いのが分かる。

――モデルに着用感の感想を聞くと、椅子に座ったときに3分割パンツは合体パンツより股上が浅く感じたそうである。これは、3分割パンツは合体パンツより明らかに運動量が不足していることを意味する。つまり、BブロックとCブロックの間に出来る隙間が運動量として機能していることになる。直立姿勢でのシルエットの美しさをとるか、運動したときの機能性をとるか、その両方を満たす構造は果たしてあるのだろうか?