第十九章 段返り3つボタンジャケットのパターンとデジタルトワルチェック
フラット・パターンメーキングとデジタルトワルチェック 著:関川 政春
- 学習・知識
今回は、このコラムで初めてメンズジャケットを取り上げます。紳士服では、囲み方式の平面製図が一般的ですが、敢えて立体原型から切り開く婦人服的手法による「段返り3つボタンメンズジャケット」のパターンメーキングとデジタルトワルチェックについて解説します。それでは、始めましょう。
第十九章 段返り3つボタンジャケットのパターンとデジタルトワルチェック
1.段返り3つボタンジャケットとは
【図1】シングル3つボタンで、第一ボタンがラペルの折り返し裏部分にくるように設計されたジャケットのこと。その特徴は、第二ボタンを留めて着ることでVゾーンが下がりラペルが柔らかく折返る「お洒落な崩し感」が表現できるメリットがありイタリアンブランドのメインスタイルになっている。
2.ACS_メンズ(セットイン)ボディを平面パターンに展開する
【図2】①デフォルトで設定されている3Dボデイの面分割(12面)を確認し、②3Dメニュー[ボデイのパターン展開]をする。
【図3】①12パーツに平面展開し、②前後身頃パーツに統合する。
3.ゆるみなしのベーシックスローパーに加工する
【図4】①後肩ダーツと前後ウエストダーツにパターン整理し、3Dメニュー[PMプリフォーム]で縫合設定する。
②ACS_メンズ(セットイン)ボデイを使い、トワルチェックしゆるみ無しのフィット状態を確認する。
4.ジャケットスローパーを作成する
【図5】①切り開き線をタテに6本(赤線)ひき、指定した数値を平行に開いて身幅全体で40mm幅出しをする。
②身頃のトワルチェックをする。
【図6】①前ウエストダーツを2本に分割し、袖ぐり線をチェスト線まで繰り下げる。
②袖を縫合しトワルチェックする。袖の製図については、次項で解説する。
5.袖の製図をする
【図7】①ヨコ190mm×タテ160mmの四角形を作成し、ヨコとタテをそれぞれ等分した線をひく。
②角度2等分線を四隅にひき袖の目をひく。
③ 袖中心線を600mmに延長し、肘線を袖幅線に平行に100mmでひき、四角形をひく。
④前後シルエット線をミラー軸にして袖を開き原型1枚袖とする。
6.ダーツ位置を移動して3面構成に分割する
【図8】①前後身頃を30mm離して配置する。ウエスト線を35mm上へ、前身頃補助ダーツを30mm、後身頃ダーツを120mm脇側へ移動する(赤線)。袖ぐり線を前側へ移動し、引き直す(赤線)。
②前後パネルダーツ線と背中心線をひき、3面構成身頃(赤線)とする。
③パネルダーツ分量配分は図の要領とする。
7.マニピュレーションでゆるみ配分する
【図9】①切り開き線をひく。ボディ基準線に合わせるため脇線を15mm後側へ移動する。
②赤丸印を回転中心に肩パットの厚み5mm、前後袖ぐり線に5mm、前襟ぐり線に10mm、後襟ぐり線に3mm、身頃袖ぐり線に合わせ袖タテ線で5mmずつ、ヨコ線で5mmずつ切り開く。後肩ダーツをいせ込みとする。
③トワルチェックする。
8.2枚袖を作成する
【図10】①袖原型1枚袖の前後シルエット線を前に40mm移動し(赤線)、ミラー軸にして袖の目を畳み直す。袖中心線を袖山ノッチ線へ移動する。
②2枚袖の前後シルエット線をひく。
③前後シルエット線から、前袖は25mm、後袖は40mmで2枚袖仕上がり線をひく。
④外袖から内袖を抜き出し、反転する。外袖に18mmの釦を4個付ける。
9.2枚袖のトワルチェックをする
【図11】①前後身頃袖ぐり線と袖の目が正しくマッチングしていることを確認し、②着丈700mm、チェスト幅1000mm、ヒップ幅1100mmにパターン整理し、③トワルチェックする。
10.テーラード襟を作成する
【図12】襟ぐり線を前後中心線で3mm肩線で15mm繰り下げる。
【図13】①後身頃サイドネックから垂線30mm(襟腰幅)、羽根幅40mm(羽根幅)を肩線にぶつけ後襟外回り線をひく。
②20mm幅持出し線のウエスト線交点から100mm位置をⓐ、サイドネックから25mm下で肩線に平行な25mmの点ⓑを結びラペル返り線とする。襟とラペルのスケッチをする(赤線)。
③ラペル返り線をミラー軸に反転、ゴージラインを延長し前襟ぐり線につなげる(赤線)。
【図14】①ラペル返り線をミラー軸に前衿ぐり線(赤線)を反転し、②襟付け線寸法ⓧ、後襟外回り線寸法ⓨを半径とする円弧を描き外接する線を襟後中心線とする。襟腰幅30mm羽根幅40mmをとり、上襟をひく。
③前後脇身頃をパネル線で突き合わせ、前端線、裾線(赤線)、釦23mm×3個をひく。
④胸ポケットをタテ25mmヨコ95mm、パチポケットをタテ190mmヨコ160mmでひく。
11.デジタルトワルを作成する
【図15】①ボディに全身パーツを配置する。
②3Dメニュー[腕を下ろすB]で縫合処理する。
③袖の据わりが定位置になったら停止する。
④ボディの腕を抜く。
⑤全身トワルが完成する。
【図16】ACS_メンズ(セットイン)ボディで、実際に使用する生地柄でトワルチェックする。
関川 政春(セキカワ マサハル) 2002年~2017年 国際トータルファッション専門学校 校長 現在は校長を退任し、同校の非常勤講師としてアパレルCAD教育に携わる 2017年6月にデジタルトワル研究についての書籍出版と同時にウェブサイトを公開 ※下記参照 |
活動 | ファッションビジネス学会全国大会(2016年開催)で、3Dトワルを活用した「婦人テーラードジャケットのパターン&3Dシミュレーション検証」を発表 2017年11月25日開催のファッションビジネス学会全国大会において、デジタルトワルの活用事例を発表 |
ウェブサイト | http://masa-cad.com/ |
出版書籍 | https://masacad.thebase.in/ |