実践!レディース・パターン教室21(ドルマンスリーブの作図 その2)

パターンメイキングをアパレルCADで実践

  • 新聞掲載

アパレル工業新聞 2020年5月1日発行 4面
この記事・写真等は、アパレル工業新聞社の許諾を得て掲載しています。

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前回は、ドルマンスリーブの肩は後ろに抜けやすい、という話で終わりました。この原稿を書いている令和2年現在では、巷のファッションは依然として抜き襟であふれていますので、後ろに抜けやすいドルマンスリーブは、まさに今のファッションにはうってつけのアイテムと言えます。しかし、以前にも話しましたが、私は古いタイプの人間ですので、初めから抜ける服を作ることには少なからず抵抗感を抱いてしまいます。どんな服であれ服はきちんと肩に乗せて着るものと常に思い、今までパターンを引いてきたつもりです。とは言ったものの、誰が着ても後ろに抜けないドルマンスリーブを作るのは、やはり難しいことでもあります。

今回は、ドルマンスリーブは何故後ろに抜けやすいのか?その原因を探るために、数通りのサンプルを作成して試着検討をしました。まずはその写真を見て、その現象から後ろ抜け防止対策を考えます。そして、本題のドルマンスリーブの作図では、まずは構造を理解するためにセットインスリーブを使用したパターン展開による作図法を紹介します。パターン展開によってドルマンスリーブがどのように作られるのか、また、前後の袖下線の長さと形状の関係はどのようになっているかを分かり易く解説します。

4.肩線の移動は必要か?

ドルマンスリーブのパターンを引く際、肩線を前に移動する場合が多い。もちろんこれは肩が後ろに抜けるのを防ぐためだが、これは経験上そうすれば抜けにくくなるというセオリーによって行っている場合と、前回触れたように地の目の力学的な理論に基づいて行っている場合がある。しかし、後者の理論の場合は、それを証明する科学的根拠やバックデータは残念ながら皆無である。だから自分で確かめてみた。次の写真は3つのタイプのドルマンスリーブをモデルに着用してもらい、それぞれのタイプごとに肩線がどの程度後ろに抜けるかを検証したものである。この検証結果をもとに、後ろに抜ける原因とその防止対策を考察する。但し、極めて簡単な検証方法であり、結果の真偽性についてはより厳密な検証が必要であることを前もって断っておく。

■Aタイプ=通常の肩線で、袖の傾斜が肩の延長タイプ。

■A2タイプ=Aタイプの肩線を2㌢前に移動したタイプ。

■Bタイプ=通常の肩線で、更に袖に傾斜をつけたタイプ。

※縫い代の影響を少なくするため、縫い代はすべて表に出してある。

※肩線の位置を分かり易くするため、前後身頃の色を変えてある。

※肩パッドは入っていない。

【写真5】Aタイプの正面と、腕を数回上げ下げした後の側面。首から肩にかけて、多少肩線が後ろに抜けている。

【写真6】A2タイプの正面と、腕を数回上げ下げした後の側面。一見抜けていないようにも見えるが、前身頃の裾の上がり具合はAタイプとほぼ同じである。

【写真7】Bタイプの正面と、腕を数回上げ下げした後の側面。肩線を移動していないにもかかわらず、後ろ抜けは殆どない。

これらの結果から、肩線が後ろに抜ける主たる原因は、肩線の縫い目の位置よりも肩傾斜と袖の傾斜度に起因することが推測できる。つまり、人の静止状態に近い形状のパターンであれば基本的に服は安定するという、極めて当たり前の事実がこの検証結果にもそのまま表れていると言える。

結論としては、肩線の移動という手段は後ろ抜けを防止するのではなく、後ろに抜けた状態の肩線の位置を元の位置まで戻す操作に過ぎない、というのが筆者の考えである。また、地の目による力学的作用については、この検証だけでは立証不可能であった。因みに、試着したモデルに感想を聞いたところ、一番着心地が良かったのはBタイプであった。

――この検証は一人のモデルに最小限のサンプルで行ったので、結果については極めて限定的と受け止めていただきたい。ここで筆者が言いたいのは、何故そうなるのかという理由を教えられたまま鵜呑みにせず、常に自分で考えて試すことが大事だということである。もちろん、抜ける理由はこれだけではないのだが、地の目の力学的作用というレトリックに惑わされることがないようにしたいものだ。

5.パターン展開によるドルマンスリーブの作図

ドルマンスリーブの構造がよく分かるように、パターン展開による作図で説明する。ラグランスリーブと同様に、セットインスリーブを展開してどのようにドルマンスリーブに変化させていくかを確認しながら作図をしてみよう。

【図8】展開済みの身頃と袖のパターン。

▼肩のゆとり分の展開は「b」が「a」の2倍になるようにする。※前肩より後ろ肩を大きく開く理由は「テーラードジャケットの作図/第1章―3.肩パッド分の展開」を参照。

▼アームホールのゆとり分の展開は「c」と「d」の間口が同寸法になるようにする。

▼袖山の高さはアームホールの30%を目安にする。

【図9】▼前後身頃に袖を合わせる。その際、身頃の展開位置に合わせて袖も同分量展開する。

【図10】▼身頃と袖底が重なった部分の面積(グレーの部分)を「e」及び「f」とすると、「e」の面積がかなり多くなる。このことからドルマンスリーブは立体的な構築が出来ない構造であると言える。

▼脇線と袖下線をL字に結んだ線を「g」及び「h」とすると、「e」の重なりが多い分「g」の距離が「h」より短くなる。このままでは袖下線を縫い合わせることができない。

【図11】▼「g」と「h」の距離が同じになるまで身頃の脇線と袖下線を移動する。

▼その結果「e」と「f」の面積も等しくなる。

【図12】▼後ろ身頃の脇線と袖下線の角をカーブで結ぶ。

【図13】▼袖下線のカーブにより出来たグレーの部分を抜き取って反転する。

▼グレー部分を2分割して前身頃の脇線と袖下線に結合する。カーブが重なった分は伸ばしにする。

【図14】完成したドルマンスリーブのパターン。

――今回はドルマンスリーブの構造を理解するためにパターン展開による方法を紹介したが、ラグランスリーブのパターン展開と同様で、やはり袖のパターンからいちいち展開していたのでは面倒だ。まあ、実践でやる場合はこんな細かく切り刻んだりはしませんがね。ただ、ストーリーとして必要な行程ではあるので、ここはしっかりと理解して次へ進んでいただきたい。次回はより実践的な平面製図による作図法を紹介する。