実践!レディース・パターン教室11(テーラード・ジャケットの作図・・・その9)~アパレル工業新聞コラボ企画~

パターンメイキングをアパレルCADで実践

  • 新聞掲載

アパレル工業新聞 2018年9月1日発行 4面
この記事・写真等は、アパレル工業新聞社の許諾を得て掲載しています。

長々と3面ジャケットのパターンメーキングについて説明してきましたが、今回は締めくくりとして4面ジャケットの説明をします。4面と言えば、プリンセスラインやパネルラインが代表的ですが、レディスのジャケットにおいてはむしろこちらの方がスタンダードでしょう。本来でしたら個別のテーマとして取り上げるべきなのですが、ここでは4面ジャケットもテーラード・ジャケットのデザイン・バリエーションの一つと捉まえて、補足的な説明に留めることにします。実は、私個人としては3面より4面の方が構造的な難しさを感じています。その辺を語りだすとまた長々と連載を続けることになってしまいますので、4面の何が難しいのか、その要点だけでも伝えられたらいいかなと思います。

第5章 身頃の作図(4面体)

1.3面と同じ方法で4面は作れるのか?

第1章[7.トワルによるシルエットの造作]で、ストレート原型のトワルからウエストを絞ってシルエットを作る方法を、3面ジャケット原型の基本的な作成方法として紹介した。3面も4面もウエストを絞るダーツの位置が違うだけで、あとは同じ。ならばストレート原型から3面と同じように4面のシルエットを作ることができるはず。そう考えるのは決して間違っているとは思えないが、実際にやってみるとどうなるか検証してみよう。

【写真1】ストレート原型のウエストを絞って3面ジャケットのシルエットを造作したトワルとそのパターン。これまで説明してきた通りのものである。

column_kikuchi_11-1.jpg

【写真2】同じようにストレート原型のウエストを4面の位置で絞ったトワルとそのパターン。よく見ると、ある部分に不具合が発生している

column_kikuchi_11-2.jpg

【写真3】不具合が発生した部分を拡大した写真。4面の方はアームホールの形状が崩れているのが分かる。特に後ろアームホールがボディーに張り付いて後腋点より被ってしまっている。これは明らかに後ろアームホール丈が不足している場合に起きる現象である。

column_kikuchi_11-3.jpg

――アームホールの崩れを直すには脇線のピンを外し、前脇と後ろ脇を上下にスライドしてピンを打ち直す。この場合は前脇を下に、後ろ脇を上にスライドして打ち直すことで後ろアームホール丈が長くなり、張り付きが改善する。(普段ドレーピングを多用している人であれば、ドレーピングでゼロから4面のシルエットを作るとき、無意識にこの操作をしているはずである。)修正後のバストラインは当然、水平ではなくなる。つまり、3面はバストラインが水平だが、4面はバストラインが水平ではない、ということである。

2.3面ジャケット原型からプリンセスラインへの展開

まず、プリンセスラインの定義についてお断りしておきたい。プリンセスラインとは、本来はイギリスのアレクサンドラ王女(プリンセス)が着ていたドレスの切り替え線に由来するそうだが、筆者はこの業界に入って以来ずっと「肩からバストトップを通って裾に至る縦の切り替え線」をプリンセスラインと呼んでいるので、ここでもそのように定義したい。 トワルによるシルエットの造作において、3面と同じ方法では4面は作れないことが分かった。前述の脇線のスライドによる修正を施すのも一策だが、もっと論理的な方法として、3面ジャケット原型からパターン展開によって4面にする方法を説明する。

【写真4】ストレート原型のウエストを絞るダーツを3か所から5か所に増やしてシルエットを造作したトワル。3面より更にボディーに沿ったシルエットになる。当然、バストラインは水平である。

column_kikuchi_11-4.jpg

【図1】写真4のトワルと同じになるように、3面ジャケット原型を次のように修正する。※数値は参考値
▼後ろ肩線のイセをダーツに戻す。
▼後ろ脇のウエストダーツを3か所に分散する。1本は脇線上に、もう1本は肩甲骨直下の位置に振り分ける。
▼背中心のダーツ分を減らす。
▼前脇のウエストダーツをBP(バスト・ポイント)~脇線の中間まで平行移動する。

column_kikuchi_11-5.jpg

【図2】▼プリンセスラインと脇線で身頃を4分割する。

【図3】
▼前脇身頃と後ろ脇身頃をウエストラインで分割する。
▼ダーツをたたんだ後、再びウエストラインで結合する。
▼バストラインは両端を結ぶ直線で引き直す。

column_kikuchi_11-6.jpgcolumn_kikuchi_11-7.jpg

【図4】バストラインを水平にして再配列して、その上にストレート原型を重ねた図。

【図5】アームホール部分の拡大図。後ろアームホール丈がストレート原型より長くなっているのが分かる。

column_kikuchi_11-8.jpgcolumn_kikuchi_11-9.jpg

図4を3Dシミュレーション

【図6】不要な浮き分を減らしたいときは、背中心と後ろアームホールに逃がしたダーツを分をたたんで元に戻す。その場合、袖のパターンは改めて引き直すことになる。

column_kikuchi_11-10.jpg

――プリンセスラインはダーツの処理を切り替え線上で如何様にもできるため、もっとも思い通りのシルエットを作ることができる構造だと言える。特に後ろアームホールの浮き分をたたむことで、「抱き落ち」をはじめとする3面ジャケット特有の諸問題が一気に解決する。紳士服の歴史と変遷の中で、先人たちは何故テーラード・ジャケットにプリンセスラインを採用しなかったのか?それを考えると筆者は残念でならない。

3.プリンセスラインからパネルラインへの展開

パネルラインの定義についてもお断りしておきたい。パネルラインとは、本来は面を分割する切り替え線全般を指すのだが、筆者はこの業界に入って以来ずっと「アームホールに向かってカーブしている切り替え線」をパネルラインと呼んでいるので、ここでもそのように定義したい。因みに、イギリスのアレクサンドラ王女(プリンセス)が着ていたドレスはパネルラインである。日本では何故か呼称が逆転している。

パネルラインは構造的に3面とかなり類似している。特に肩ダーツの処理に関しては3面と全く同じなので、袖のパターンは3面との使い回しが可能である。注意すべき点は、やはり後ろアームホール丈が3面のそれより長くなること。そこが3面と4面のもっとも大きな違いである。

【図7】▼プリンセスライン原型の前脇身頃と後ろ脇身頃のそれぞれにパネルラインを入れる。

【図8】
▼グレー部分に展開線を入れ、それぞれ前身頃と後ろ身頃に分割移動する。このとき、後ろ肩のダーツ分をイセに戻しておく。
▼展開線で開いた分はイセにする。※グレー部分の面積が大きい程イセ分量も増える。

column_kikuchi_11-11.jpgcolumn_kikuchi_11-12.jpg

図8を3Dシミュレーション

【図9】後ろアームホールの拡大図。バストラインを水平に配置すると、アームホールに段差ができているのが分かる。これが後ろアームホール丈の増加分である。

column_kikuchi_11-13.jpg

【図10】パターン展開による結果を踏まえて、ストレート原型に直接パネルラインを入れて作図をした図。後ろ脇身頃のアームホールを回転して段差を作るのがポイント。※数値は参考値

column_kikuchi_11-14.jpg

図10を3Dシミュレーション

――以上で簡単ではあるが4面ジャケットの説明を終わりにする。繰り返すが、3面との違いはバストラインが水平にならないことである。従って、立体裁断であろうが平面製図であろうが、バストラインを水平にしたままでは4面を作ることはできない。これは身頃の構造の基本的な論理であって、ジャケットに限らずブラウスやドレスにも全く同じことが言えるのだ。このことを最後にお伝えして、[テーラード・ジャケットのパターンメーキング]をひとまず完結したい。