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第一章 ストレートスローパーのデジタルトワルチェック

フラット・パターンメーキングとデジタルトワルチェック 著:関川 政春

  • 学習・知識

まえがき

パターンメーキングは、「熟練」を要する仕事です。長年にわたって蓄積されたアナログな経験値を若い人にどう技術継承するか大きな課題となっています。
そこで私は、「デジタルトワル」に一つの光を見い出しました。

デジタルトワルは、CADパターンメーキングしたパーツさえあれば同一のPC画面上で立体ボディに着せ付けてパターンチェックし、平面パターンに瞬時に修正箇所を反映できる「優れもの」です。
そして、アパレル業界の長年の英知で蓄積されてきたパターン技術ノウハウをデジタルトワルで敢えて書き起こしてみようと思いました。

「本当に、洋服のシルエットやディテールがPC上で再現されるだろうか?」
「Pattern MagicⅡ3Dで、実際どこまでシミュレーションが可能か知りたい」
この一念で、「マサCADのデジタルトワル研究室」というWebページを作り「デジタルトワル」にフォーカスした実践研究を進めてきたわけです。このコラムは、そんな研究の一旦をまとめた内容となっています。

手作業でやっていたトワルチェックをデジタル化することで、新たな発見もありました。例えば、PCの得意とする保存機能です。必要とする時に、PCの膨大なパターン・データベースから欲しいデジタルトワルを読み込み、3Dで確認し、再び平面パターン修正をすることができます。
パターンの基礎的な勉強や若い人材への技術継承に、最適なツールだと確信をしました。

このコラムがいくらかでもお役にたてればと思います。また、更に詳しく「デジタルトワル」の技術・知識を学びたい方には、PDF書籍「マサCADのデジタルトワルスキルアップ講座」をお読みいただくことをお勧めします。

著者  関川 政春

フラット・パターンメーキングとデジタルトワルチェック

婦人既製服アイテムを、上物、下物、ワンピースの3つに大別し、各スローパーからのパターンメーキングとそのデジタルトワルチェックについて解説します。 早速始めましょう。

第一章 ストレートスローパーのデジタルトワルチェック

1.前身頃のマニピュレーション

前身頃のシルエットを変更することなく、バストポイントを基点に、360°どの方向にもダーツ移動やゆるみ分散ができる。このマニピュレーションの原理・原則をデジタルで可能か実際にトライしてみよう! 以下説明する。

【図1】前襟ぐり線へ10mmのゆるみ分散。

バストポイントⓐから前襟ぐり線の中点ⓑに直線で展開線をひき、ⓐを基点にパーツ㋑を反時計回りに10mm回転する。前襟ぐり線を1本につなげる。

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2.パターンマジックⅡ&3Dによるシミュレーション

パターンメーキングしたストレートスローパー前後身頃と袖をパーツ化して用意し、ACS_レディス(セットイン)ボディでデジタルトワルチェックする。

【図2】線情報の設定で、縫合線を確定する。――袖山線にイセ込みが入るよう指定する。

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【図3】配置の設定で、ボディにパーツを配置する。――配置方法を、バスト線上で前後身頃配置、更に手動で袖をボディ配置する。

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【図4】PMプリフォームで、線固定、点固定の設定をして縫合をする。――袖の据わり角度が定まったら縫合を停止する。

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【図5】カラートワルの設定をする。――トワルの色は、多様なカラーやプリント地から選べる。

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【図6】360°各方向からトワルチェックする。

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【図7】前襟ぐり線に10mm分散したデジタルトワルチェック。右枠内は、拡大図である。――前襟ぐり展開線の間にタルミが入っていることが確認できる。

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【図8】ボディのバストラインとデジタルトワルのバストラインが一致しているのが確認できる(赤線部分)――この原理がタイトスローパーから展開して、ストレートスローパーを作るときのポイントとなる。

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3.アームホールと袖付けの関係

袖付けの要点は、前後アームホールのカナメ点を結んだ直線と袖中心線が直角に交わるようなバランスを求めて製図することがポイントとなる。

【図9】袖パターンのカナメ点である第一ノッチと第三ノッチを直線で結び、袖山に袖の目を写したものである。

【図10】ボディ右側面から見た第一ノッチと第三ノッチを結んだ直線ⓧと袖中心線ⓨが直角に交わる概念図である。

【図11】デジタルトワルで袖を縫合する。概念図通りに袖中心線(点線)ⓨが前後カナメ点を結んだ直線ⓧに直角に付けられているのがチェックできる。

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4.袖付けのデジタルトワルチェック

袖付けのパターンチェックポイントは、第一に袖の振り、第二に袖の据わり、第三に袖山のイセ込み適正配分となる。

【図12】袖の振りとは、側面からみたときに袖中心線の基点㋑から垂線(赤線)を降ろし、縫合した袖トワルの中心線との角度αを言う。

袖の振りが小さい< α<袖の振りが大きい

【図13】袖の据わりとは、前面からみたときにSP㋺より垂線(赤線)を降ろし、袖トワルの中心線との角度βを言う。

袖の据わりが深い< β<袖の据わりが浅い

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【図14】袖のイセ込み分量は、データとして管理する。
前アームホールⓐ~ⓑを、ⓐから第一ノッチ間を▲寸法で、残りアームホールを2等分し第二ノッチとする。
後アームホールⓔ~ⓕを、ⓔから第三ノッチ間を●寸法で、残りアームホールを2等分し第四ノッチとする。

前袖山線ⓒから▲寸法を同寸で第一ノッチとし、第二ノッチ位置は、前アームホール△寸法に前イセ分×0.3を加えた寸法とする。

後袖山線ⓖから●寸法を同寸で第三ノッチとし、第四ノッチ位置は、後アームホール〇寸法に後イセ分×0.4を加えた寸法とする。

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【図15】袖山のイセ込みによる丸味をデジタルトワルでチェックしたもの。

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5.ACS_LadiesHumanBodyのデジタルトワルチェック

新たに作成したヌード用のストレートスローパーとスカートスローパーを使用し、 ACS_LadiesHumanBodyに着せ付けてみよう。

【図16】は、袖を外したチェックで、ストレートスローパーのシルエットを確認できる。

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【図17】は、袖を付けたチェックである。

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関川 政春(セキカワ マサハル)

2002年~2017年 国際トータルファッション専門学校 校長

現在は校長を退任し、同校の非常勤講師としてアパレルCAD教育に携わる

2017年6月にデジタルトワル研究についての書籍出版と同時にウェブサイトを公開

※下記参照

活動

ファッションビジネス学会全国大会(2016年開催)で、3Dトワルを活用した「婦人テーラードジャケットのパターン&3Dシミュレーション検証」を発表

2017年11月25日開催のファッションビジネス学会全国大会において、デジタルトワルの活用事例を発表

ウェブサイト http://masa-cad.com/
出版書籍 https://masacad.thebase.in/

3Dバーチャルフィッティングソフト
パターンマジック®Ⅱ3D

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