
No.050 再びドロップショルダーの作図 その1
実践!レディース・パターン教室 著:菊地 正哲
- 学習・知識
アパレル工業新聞 2025年5月1日発行 5面
この記事・写真等は、アパレル工業新聞社の許諾を得て掲載しています。
現在、私はドレスメーカー学院で教鞭をとらせていただいているのですが、先日当学院にて、現在アパレル業界の第一線で活躍している卒業生をパネラーとして招き、これから就職活動をする在校生に向けたパネルディスカッションを開催しました。在校生にとっては、実際に働いている先輩達から仕事の内容や就活の体験談などを聞くことができ、大変有意義な時間であったと思います。更に嬉しいことに、その時のパネラーの一人で、某大手アパレル企業でパタンナーとして活躍している卒業生が、私のこの記事をいつも読んでいると言ってくれたのです。終わった後、その卒業生と少し会話をさせていただいたのですが、記事についての話をする中で、実は毎回ネタを探すのに苦労していることを打ち明けたところ、それならドロップショルダーをやってほしいとリクエストを頂きました。ドロップショルダーに関しては第19回(2020年1月号)で既に取り上げていますが、5年以上も前であり、せっかくリクエストを頂いたことでもあるので、それじゃあと思い今回再び取り上げることにしました。渡りに船であります。前回は袖原型を用いたパターン展開による作図でしたが、今回は実践向きの製図方法を解説しますので、参考にしていただけると嬉しいです。
1.バストダーツの扱い
【1-1】バストダーツをそのまま残してドロップショルダーにしたパターン。
【1-2】ボディーに着せ付けた3D画像。
AH(アームホール)が小さくなるばかりか、ドロップさせるほどカマ幅が狭くなる。これでは腕が入らない。
![実践!レディース・パターン教室50[1-2]](/shared/images/community/column_kikuchi_50-2.jpg)
【1-3】ダーツをすべてAHに逃がしてドロップショルダーにしたパターン。
【1-4】ボディーに着せ付けた3D画像。
カマ幅が十分に広がるので、腕が入り易くなる。
![実践!レディース・パターン教室50[1-4]](/shared/images/community/column_kikuchi_50-4.jpg)
――この画像からも分かるように、ドロップショルダーはバストダーツをAHに全量、または適宜逃がすこと。
2.カマのないアームホール
【2-1】AHを直線にしたドロップショルダーのパターン。
バスト寸法に対して最もドロップ分を多くしたいときは直線のAHにする。袖の傾斜度に比例して袖底が深くなる。
![実践!レディース・パターン教室50[2-1]](/shared/images/community/column_kikuchi_50-5.jpg)
【2-2】ボディーに着せ付けた3D画像。
![実践!レディース・パターン教室50[2-2]](/shared/images/community/column_kikuchi_50-6.jpg)
【2-3】袖が付いた状態の3D画像。
![実践!レディース・パターン教室50[2-3]](/shared/images/community/column_kikuchi_50-7.jpg)
――キモノスリーブと同じ様な袖なので、袖底を十分に下げる必要がある。完全な平面服になるので、ニットやカットソー向きである。
3.袖の傾斜度を決める
袖の傾斜度を3通りに分類した3D画像。
【3-1】[A]肩線を延長した傾斜度。この時の袖山の高さは元のAHの10%を目安にする。
![実践!レディース・パターン教室50[3-1]](/shared/images/community/column_kikuchi_50-8.jpg)
【3-2】[B]約45度の傾斜度。この時の袖山の高さは元のAHの20%を目安にする。
![実践!レディース・パターン教室50[3-2]](/shared/images/community/column_kikuchi_50-9.jpg)
【3-3】[C]約30度の傾斜度。この時の袖山の高さは元のAHの30%を目安にする。
![実践!レディース・パターン教室50[3-3]](/shared/images/community/column_kikuchi_50-10.jpg)
――ドロップショルダーにおける袖の傾斜度は30度を限度とする。
4.ドロップショルダーの作図
【4-1】[A]肩線の延長の作図。
▼肩線を元のAHの10%延長する。▼延長した肩先からドロップしたAHを引く。▼これに付く袖は長方形とし、袖幅はドロップしたAHと同寸にする。
![実践!レディース・パターン教室50[4-1]](/shared/images/community/column_kikuchi_50-11.jpg)
――この場合のドロップ寸法はAHの10%が最大値になる。それ以上ドロップさせたい場合は、それに伴いバスト寸法を大きくする必要がある。
【4-2】[B]傾斜度45度の作図。
▼前肩線を1センチ、後ろ肩線を1.5センチ延長する。(差寸の5ミリは後ろ肩先をいせる。)
▼前肩先から20度の角度でドロップした肩線を引く。
▼後ろ肩先から10度の角度でドロップした肩線を引く。
▼それぞれの肩先から元のAHの20%下がった位置に袖幅線を引く。
▼肩先から袖幅線までの間にドロップ位置を決め、ドロップしたAHを引く。
▼ドロップしたAHと同寸の袖山線を引く。
![実践!レディース・パターン教室50[4-2]](/shared/images/community/column_kikuchi_50-12.jpg)
――この場合のドロップ位置は肩先から袖幅線の2/3を限度とする。
【4-3】[C]傾斜度30度の作図。
▼前潟線を1.5センチ、後ろ肩線を2センチ延長する。(差寸の5センチは後ろ肩先をいせる。)
▼前肩先から30度の角度でドロップした肩線を引く。
▼後ろ肩先から20度の角度でドロップした肩線を引く。
▼それぞれの肩先から元のAHの30%下がった位置に袖幅線を引く。
▼肩先から袖幅線までの間にドロップ位置を決め、ドロップしたAHを引く。
▼ドロップしたAHと同寸の袖山線を引く。
![実践!レディース・パターン教室50[4-3]](/shared/images/community/column_kikuchi_50-13.jpg)
――この場合のドロップ位置は肩先から袖幅線の1/2を限度とする。
■肩線の移動は?
ラグランやドロップショルダーは肩線を前に移動するのが一般的だが、ここではそれはしない。その理由も含めて、次回は更にドロップさせた作図とバスト寸法との関係について解説する。

