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No.002 フードのパターンメーキング・・・その2

実践!レディース・パターン教室 著:菊地 正哲

  • 学習・知識

アパレル工業新聞 2017年3月1日発行 5面
この記事・写真等は、アパレル工業新聞社の許諾を得て掲載しています。

フードのパターンメーキング・・・その2

前回に続いて第2回のテーマも「フードのパターンメーキング」です。前回は基本的なフードの作図法を紹介しましたが、今回はフードの外観の変化要因について解説します。フードの外観には、高さ・奥行・傾斜といった、主にフードを被ったときの形状を決める基本的要素以外に、フードを下ろしたときの形状も服のデザイン要素として重要になります。コートにしてもパーカーにしても、殆どの場合はフードを下ろして着用する時間が長いと思われますので、むしろこちらの方が重要かもしれません。そこで、パターン形状の違いがフードの外観にどのように影響してくるのか、被ったときと下ろしたときの両方の状態で比較してみることにします。さらに、応用デザインとしてラペル続きのフードの作図を紹介します。最後に、ちょっとした試みとして、フードのデッサンからパターンを起こすパターン展開方式に挑戦してみようと思います。

4.フード付け線と襟腰の高さの関係

 ――「襟付け線」を以後「フード付け線」と記述する。「襟腰の高さ」とはフードを下ろしたときの折り返りの高さのこと。襟ではないのに「襟腰」と称するのはどうかと思うが、他に呼び方が思いつかないので、この際ご容赦頂きたい。
【図16】フード付け線のカーブ形状によるフードの外観の違いを比較する。
■Aは基本形フードのパターン。外観図はフードを被ったときと下ろしたときの状態をそれぞれ表している。
■Bはフード付け線の後ろ中心を高くしたパターン。被ったときは襟腰部分の弛みがなく、下ろしたときは襟腰の高さが低くなる。※襟に例えると外回りが長い《あまい襟》と同じ。
■Cはフード付け線の後ろ中心を低くしたパターン。被ったときは襟腰部分の弛みが多く、下ろしたときは襟腰の高さが高くなる。※襟に例えると外回りが短い《からい襟》と同じ。
――上にアウターを重ね着するような場合は、アウターの襟をフードが跨ぐために襟腰の高さが必要になる。一方でジャージーなど伸縮性のある素材では襟腰が不要な場合もある。フードを設計する際は素材や用途を考慮して、適切な襟腰の高さを設定する。

5.フードの傾斜度とフード口のゆとりの関係

【図17】フード高さ線の傾斜度によるフードの外観の違いを比較する。但しフードの高さは同一とする。
■Aはフード高さ線の傾斜度が15度(基本形)のパターン。外観図はフードを被ったときの正面と下ろしたときの状態をそれぞれ表している。
■Bはフード高さ線の傾斜度を5度に設定したパターン。フード口が長くなるので被ったときのフード口の弛みが多い。下ろしたときはフード口の浮きが多くフード全体の位置が下がる。
■Cはフード高さ線の傾斜度を25度に設定したパターン。フード口が短くなるので被ったときのフード口の弛みがない。下ろしたときはフード口の浮きが少なくフード全体の位置が上がる。
――フード口のゆとりは顔の表情にも影響する。パターン設計においてはフードの高さ(SNPから頭頂点までの周長)の設定が直接の要因となるが、同一の高さでもパターン形状の違いによって表情が変化する。

「パターンマジックⅡ3D」で図16と図17をシミュレーション
※シミュレーションではフードの高さを変えてます。

6.ラペル続きのフードの作図

【図18】ショール・カラーとフードが一体となったデザイン。
【図19】通常のラペルと襟のパターンを使用する。
【写真1】紙のパターンをボディーに着せ付けた状態。立てた襟が首に沿うように、切込みを入れて外回りの開き分を見る。
【図20】▼【写真1】を参考に襟の外回りを4~5㌢開く。※数値は参考値。開く量が多いほど襟腰が低くなり、フード口が大きくなる。
【図21】▼襟のSNPから後ろ中心線に対して平行線を引く。▼その線から15度の角度でフード高さ線を引く。▼後は基本形フードと同様にフードの外周線を描く。※被ることを前提としないため、後頭部のカーブを小さめにしている。
【写真2】出来上がりの状態。
――ノッチド・ラペルの場合も同様。但し、ノッチド・ラペルはキザミの部分がフード口に引かれて反り返り易いので、ゴージラインを下げてフード口からキザミの位置を極力遠ざけることがポイント。

「パターンマジックⅡ」でラペル続きのフードの作図

7.パターン展開によるフードの作図(デッサンからパターンを起こす試み)

【写真3】まずは実物のフードを平らな机の上に置いてみる。この状態のフードの形をパターン上にデッサンする。

【図22】▼前後身頃を肩線で突き合せて前後の襟ぐり線をつなげる。▼襟腰の高さを決めて返り線を描く。▼フード口の大きさとフードの深さを決めて大まかな輪郭線を描く。
【図23】▼フードの輪郭線を抜き取る。▼襟ぐり線から返り線までの襟腰部分(網かけ部分)を抜き取り反転する。
【図24】▼フードと襟腰に切り込みを入れて展開し、返り線同士が突き合わせになるように合体する。
【図25】フードと襟腰を合体した状態。
【図26】▼フードの外周とフード口をトレースする。
【図27】▼フード口からフード上部(網かけ部分)を抜き取り反転する。
【図28】▼フード本体とフード上部を突き合わせて、切り込みを入れてたたみながら合体する。
【図29】合体が完了してフードが完成した状態。
【写真4】トワルを組んで出来上がりを確認。
――興味本位で試した方法だが、こんなやり方でもフードのパターンが出来ることは確認できた。但し、この方法はデッサンの描き方によって予想できない結果になってしまうので、何度も試行錯誤をしないと望み通りのパターン形状にはまずならない。白状すると、筆者もこの原稿のために幾度やり直したか知れぬ。相当な慣れを要することは確かである。それ以前に面倒くさい。

おわりに

 以上、2回にわたってフードをテーマに書かせて頂きました。まだまだ突っ込み不足なところはあると思いますが、「フードってやっぱり『襟』だよね」というのが私の結論です。しかし、本格的な防寒着やスポーツウエアなどでは機能性を無視しては語ることができないのも事実。見た目と機能性の両立、行き着く先はやっぱりそこですな。では、次回もお楽しみに。

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